伝説になりたい

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「八百代表は、いつものように金策に走り回って、いや歩き回っていますよ」 「もういいお歳なのに、相変わらずお元気ですね」 「ええ、彼女は年齢を感じさせませんし、本人も意識してないと思いますよ。自分の年齢なんて忘れていると思いますよ」  そう言って、赤ら顔の男性は声を出して笑った。  部屋を出たヨローナはそのままレッスン室に入っていった。 「あんたの言い方、おかしいって」 「はあ、おかしいのはあんたでしょうが」  レッスン室の中では、似た顔立ちの二人が対峙し、今にも一触即発のムードが漂っていた。 「あなたたち、何をしているの? 休憩時間は終わったわよ」  二人の女性はお互い睨み合ったまま。見かねた別の一人がことの顛末を語った。 「なるほど。セリフのイントネーションがおかしいとお互いが主張しているのね」  ヨローナは、今聞いた揉め事の顛末を要約して口にした。すると、即座に当事者の二人が反応した。   「イントネーションやこーじゃのうて、この子なぁ訛りよ」 「だはんで、もうすでに、なのは訛り通り越すて方言よ」  日本人ではないヨローナにとって、訛りと方言の違いは皆目検討がつかない。そもそも、すでに二人の話している言葉がよく理解できなかった。 「もうケンカはやめや。早う仲直りしてレッスン始めやで」  とっくにヨローナの理解できる日本語の範疇を越えている上に、止めに入ったもう一人の言葉もよく分からない。ヨローナが理解できるのは、のみなのだ。 「さっきまでは、みんなちゃんと標準語を喋ってたじゃないの。どうしたのよ、急に」
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