伝説になりたい

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 津軽弁で憤っていた女性が、一瞬身体を強張らせた。次の瞬間、岡山弁の女性が津軽弁の女性を指差して大きな声を出した。 「あの子が、ヨローナ先生の言い方よりうちの方が気持ちが入る言い出して」 「ばって、この子だってそう思うってしゃべったんだ。そえでお互いのしゃべり方で台詞しゃべり合ってあったら……」  はっきりと意味を理解はできなかったヨローナは、少し考えてみんなに提案をした。 「なるほど。確かに日本語は私よりもあなたたちの方がよく理解しているものね。じゃあ、それぞれの表現で台詞を言ってみてくれる」  ヨローナの提案に四十七人が顔を見合わせた。そして、津軽弁の女性が前に出た。 「わー、綺麗?」 「うち、綺麗?」 「あたい、綺麗?」 「わ、綺麗?」  似たような表現だが、言葉以上に伝わり方にばらつきがある。確かに土地土地の言葉は、警戒心を薄くさせる。しかし、それはその土地限定での話。ヨローナは決断をした。 「分かった、あなたたちの気持ちは分かった。ただそれじゃあ、になってしまうわ。それじゃあ、ダメなのよ。あなたたちの目標はなんだった?」  四十七人はヨローナの言葉に声を合わせる。 「「「伝説になることです」」」 「ただの伝説ではないでしょう」 「「「都市伝説になることです」」」 「そうよ、あなたたちは都市伝説になるの。それも、日本全国どこでも通用する都市伝説よ」 ◆◇◆◇  事務室に座るヨローナの前にお茶を置いて、赤ら顔の男性が正面に座った。 「一悶着あったようですが、さすがヨローナ先生」
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