伝説になりたい

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「いえ、あの子たちの真剣な思いがぶつかっただけですので、なんの問題もないですよ、さん」 「いい子たちを厳選してスカウトしてくれたさんの力も大きいですね」 「本当に。河童さんのスカウト能力には感服ですわ」  ヨローナの言葉に、頭頂部の皿を触りながら照れる河童。 「例え、良い素材が集まっても私たちには全国区の都市伝説を作るノウハウがないんですよ」 「あ、八百代表」  天狗の隣にゆっくりと腰を下ろす神職の様な服装をした女性、八百比丘尼(やおびくに)である。 「どうにもこうにも日本では、の風潮が強いのよ。天狗といえば鞍馬山と相場は決まっているし、個体数のかなり多い河童にいたっては、遠野や牛久、九州各地とかなり広範囲に伝承されていますが、あまりにも地域特性があって同じ妖怪のものと思えない伝説や伝承ばかり」 「私たち天狗もいろいろなところで祭事などして頂いていますが、どうにも話が異なっていて。それに比べると、八百代表の伝承は似ているものが多くて、まさに生ける伝説なんですよ」 「まあ、私は一人しかいませんからね。それで日本中を歩き回って私の存在を知っていただいていたのですが、ここまでくるのに八百年もかかってしまいました」  ここは、兵庫県F市、とある神社の床下を抜けた地下深く。江戸から明治、大正、昭和と時代が流れ、文明の発達とともに妖怪の存在がある種キャラクター化されつつあった。妖怪たちの中には人間を敵視していないものも多くいたが、自分たちが愛らしいキャラクター化されていることは我慢できなかった。  そこで、妖怪たちは考えた。
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