伝説になりたい

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◆◇◆◇ 「というように、日本中を震撼させた都市伝説"口裂け女"はこうして生まれたんですね。そうそう同じ様に人面犬や人面魚も成功例です」  天狗の説明を聞く、若手妖怪たち。 「質問があるんスけど?」 「なんでしょう?」 「あの、そのヨローナっつう妖怪先生はなんで四十七都道府県に、わざわざ一人ずつ口裂け女を配置したんスか? ネットでブワァーって噂広めれば楽だったんじゃないっスかね」  Z世代の妖怪の質問に天狗は苦笑いで答えた。 「口裂け女の都市伝説が広まったのは、一九七八年のことです。今から四半世紀も前の話で、その当時はインターネットなんてものは普及していなかったんですよ。だから、人々の噂から波及させてマスコミを動かすしかなかったんですよ」 「マジっスか。ネットって昔っからあるのかと思ってたっス」 「ネットを使った都市伝説も実はあるんだよ。って都市伝説なんだけれどね」 「あっ、でもあれ妖怪出てこないっスよね」  天狗は棚から古い資料写真を出して懐かしそうに眺めた。 「あの時は、最終電車に乗っていた乗務員と乗客全員を、妖狐と妖狸が妖術で眠らせて幻覚を見させたんだよ。その間に三十分で駅舎を建てて、乗客が全員降りたら急いで駅舎を解体したり大変だったわりに、我々がネット掲示板に慣れていなくて妖狐や妖狸について書くのを忘れてしまってね。ただの不気味な駅の都市伝説になってしまって、大失敗だよ」  天狗は赤ら顔をさらに赤くして声を出して笑った。 「じゃあ、リベンジとして次の伝説はまたネットをつかってみようかな。さて、誰か協力してくれますか?」  天狗の言葉にZ世代妖怪が即座に反応する。 「マジっスか? 俺も伝説になりたいっス」  時代の流れとともに、口伝てからネットへと変わっていった都市伝説の広がり方。妖怪たちも時代の流れについていかないといけない時代になっているようだ。    了
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