伝説になりたい

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 四面鏡張りの広い部屋で、四十七人の女性が同じポーズを決めている。 「揃ってないわよ。そんなんじゃ全然ダメ。デビューなんて二千年先になるわよ。あなたたちは、四十七人で一人なのよ」 「「「はい、ヨローナ先生」」」  四十七人の揃った返事は、似たような声質のため、音の響きやすいこの部屋ではステレオのように聞こえてくる。 「あなたたちは、綺麗じゃないといけないの。魅惑的で官能的じゃないと、誰もあなたたちの言葉なんて聞いてくれないわよ。わかりましたか」 「「「はい、ヨローナ先生」」」  女性たちは真剣な表情で、部屋の前方に立つヨローナ先生と呼ばれた女性を見つめる。 「あなたたちは、伝説になりたいのでしょう? 私の持っているすべての知識や経験を使って、あなたたちを日本中の誰もが知っている存在にしてあげる。日本中をアッと驚かせましょう。そのためにも、もう一度全員で合わせるわよ」 「「「はい、ヨローナ先生」」」  綺麗に揃った返事をした四十七人は、再び鏡に向かってポーズをとり始めた。 ◆◇◆◇ 「やあ、ヨローナ先生、どうですか、彼女たちは?」 「動きも喋りもまだまだ揃っていませんが、見た目はよく似ていますよね。よくこれだけ集められましたね」 「ああ、そこは彼が頑張ってくれましてね」  事務室の椅子に向かい合って座るヨローナ先生の正面に座る赤ら顔の男性は、パソコンと格闘している頭頂部がさみしくなった男性の方に視線を向けた。 「彼のネットワーク網はなかなかのものでね。我々の仲間の中ではトップレベルなんですよ」
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