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センセイ コウコウセイ キョウカイセン
ねえ先生――僕はあなたの目にどう映っていますか?
僕の存在に気づいてくれていますか?
まさか、先生に恋をするなんて思ってもいなかった。
自分が誰かに恋をするなんて思ってもいなかった。
入学してすぐの頃、一人ぼっちの僕に何も聞かずただ黙って隣に立つと、すっと紙パックのフルーツオレを渡された。
「これ、甘くて美味しいから飲んでみ」
「えっ、でも……」
「いいから、いいから」
こっちを向くこともなく、真っ直ぐ前を向いたままの先生の横顔にちらりと視線を向けると、その綺麗な顔立ちに胸の奥がとくんと鳴った。
手渡されたフルーツオレをもたつきながらもストローを差して吸えば、甘くて冷たいそれが喉を潤していく。
「甘くて……美味しいです」
「だろ? また、奢ってやる」
そう言って、先生は初めて僕の方を見て少年みたいに笑った。
きっとあの瞬間――僕は先生に恋をした。
でも、どこかで感じる先生と生徒という境界線に、近づけない虚しさだけが大きくなっていく。
どうか先生――遠くへ行かないで。
いつかきっと、僕たちの間にある境界線を越えて見せるから――。
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