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体調不良 媚薬
朝から少し体が怠くて風邪薬を飲んで誤魔化してみたけれど、全く効果が見られない。
仕方なく医務室へ足を運べば、お目当ての白衣を着た先生が出迎えてくれる。
眼鏡をかけて首下くらいまで伸びた髪を後ろで束ね、余った髪を耳にかけている。
体温を計るのにすっとイスを滑らせて近づいてきたその距離に、どくんと胸の奥が脈を打つ。
ピッと一瞬で音を鳴らした体温計を見て、先生の腕がゆっくりとこちらへ伸びてきた。
その手がおでこに触れ、目元を触り、扁桃腺の腫れを確かめるために首筋へと移動する。
ただでさえ熱で体温が高いはずなのに、どんどん熱が上がっていくのを感じていた。
「ちょっと休んでくか?」
そう言って立ち上がった先生が医務室の奥にあるカーテンをしゅるりと引けば、そこにはキレイに整えられたベッドが姿を見せる。
別に何かを期待するわけじゃない。
体調は良くないはずなのに、そのままベッドに向かって歩いていく。
横になった俺に先生がそっと小さな錠剤と水をくれた。
「それを飲んだら きっと楽になるから」
薄れゆく記憶の片隅で先生が微かに笑った気がした。
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