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春雪
俺たちは今日、高校を卒業する。
朝から季節外れの寒さに、制服の上からアウターを着込むほどだった。
隣で最後の時間を楽しむように笑顔で友達と話している姿を横目で見ながら、時々振られる話題に相槌を打つ。
いつの日からか自分の中にあった想いを伝えることができないまま月日だけが過ぎて、この日を迎えていた。
――もう、今までみたいに隣で笑う君と過ごせない――
そう思うと、心臓がぎゅっと締めつけられる。
変わらずにいつまでも君の隣にいられたら――どれだけ幸せだろう?
だけど、別々の道へ進むことを決めた俺たちは、今日が終わればただの同級生になってしまう。
「終わったね」
「だな」
「あのさ、ずっと言おうと思っていたことがあるんだ」
「なに?」
「ずっと、好きだったよ」
「うん、俺も……好きだよ」
君から伝えられた言葉に、俺も素直に想いを伝えると、空からは春雪が降り出して、お互いに手を伸ばし握りしめると、学校を背に歩き出した。
新しい二人の関係がここから始まる――。
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