なりたいものねだり

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「あぁ……もうダメだ」  準備も半ば。  まだ完全に終わってないが、もはや限界だった。  全てを放り出し、電気を消し、ベッドに飛び込む。掛け布団で全身を包み、目を閉じる。  準備が終わっていない不安が多少残り、寝付くのに時間がかかったが、それより睡眠欲の方が強かった。  意識が遠退いていく。夢と現実の境が曖昧になり、混ざり合う。  そんな中、ふと、あることを思い付いた。 「本になりたい」  ずっと本棚に収まり、時々手に取られるだけ。あまりにも動かない日々だが、それが羨ましく感じた。  激動の日々を過ごす人間で有り続けるより、本になって身動きも取れず何も気負うこと無く居続けた方が、楽なのではないか。 「本になりたい」  そう強く思った。  ……ふと、夢を見た。  自身の身体が作り替えられる。    人としての物体を失い、別の何かに変わっていく。  薄くなり、何百にも分かれ、前と後ろと背は固くなり、身体全体の大きさが手のひら二つ分くらいに縮められる。  ハードカバーサイズの本だ。  ぼんやりとそう思った。
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