なりたいものねだり

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 ただし、時間の経過と日を含む光は感じることが出来るようで、昼間の強烈な日光の差し込みや、段々と穏やかになってやがて暗くなっていく夕方から夜にかけての日没までの流れ等で、今がどのくらい経ったのか理解できた。    それまでジッと動かず代わり映えしない部屋を眺めていたが、不思議と退屈はしなかった。本になる前は、どちらかと言えば外に出て身体を動かす気質だった。それが、少しも身動きが取れない状態にも関わらず何も感じない。  本になると、どうやらアウトドア派でもインドア派に変わるようだ。 「----」  ふと、外から声が聞こえた。  何を言っているのか聞き取れない。本だから人の言葉は理解できないらしい。  ガチャッ  ドアが開いた。電気を付けたのか部屋が明るくなる。人が入って来た。認識は出来るが、性別が分からない。その人が中性的な顔立ちをしているというわけでは無い。どうやら、性別の識別自体が出来ないようだ。  荷物を置いている。その人の持ち物のようだ。本棚に近付いてきた。こちらや他の本に目線を動かしている。どうやら、読む本を選んでいるようだ。たまには動きたいのでこちらを選んでもらいたかったが、残念ながら別の者が引き抜かれて行った。  また読み終えたら選んでくれるだろう。そう思って待ってみたが、結局その人は一冊読み終えると電気を消して寝てしまった。  正直残念だった。  まぁ、次の機会があるだろう。
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