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涙が
「フフ、涙が止まらないわ」
つぶやいてティッシュで涙をぬぐった。
「そうですね。泣きたい時は思いっきり泣いた方が良いですよ」
「えェ……?」
「人は思いっきり泣くと、気持ちがリセットできるらしいんです。だから女性の方が気持ちを切り替えられるらしいですからね。感情で泣けるのは人間だけですから」
「ふぅン……、そうね」
「男は泣くのが恥だと言う人がいるので、いつまでもウジウジ引きずるんだそうです。失恋から立ち直るのも女性の方が早いと言われてますからね。女々しいのは男の方ですからね」
「……」
「泣いて泣いて、泣きつかれたら、ちゃんとボクが介抱しますから安心してください」
ボクは彼女を受け止めようと両腕を広げた。
「あ、ありがとう……」
「ずっとボクがついていますから何の気兼ねもなく思いっきり泣いてください」
「ポチロー……」
アリスは泣きながらボクに抱きついた。
「……」ボクには無言で受け止めることしかできない。
「うッ、ううゥ……」アリスは、しゃくりあげながら咽ぶように泣いた。
それほどアリスに取って大事な彼氏だったのだろう。
あいみょんの『マリーゴールド』が心地よく流れていた。ノスタルジックで哀愁の漂うメロディが今の気分にちょうど良い。
まだボクたちふたりの暑い夏は始まったばかりだ。
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