アリス

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アリス

 セクシークイーンはリビングのソファに腰掛け(くつろ)いだ格好でボクに訊いてきた。 「え、はァ、お風呂ですかァ?」  驚いて声がひっくり返りそうだ。 「ええェ、なによ。もしかして無いの?」  アリスは眉をひそめ、(おど)けたように肩をすくめた。 「いえ、もちろん風呂なら沸かしてありますけど……」  夏なので年じゅう風呂の用意はしてある。  さっきも汗を流そうと入ったばかりだ。  けれども、そんな事を訊いて部屋(ウチ)の風呂に入る気なのだろうか。今、ボクが話した通り両親は留守なのだ。この部屋には思春期真っ只中のボクとアリスしか居ない。 「じゃァ、軽くシャワーでも浴びて(アセ)流そォっと。フフゥン」  アリスは鼻歌交じりに白いブラウスのボタンを外していった。 「えェ……?」  ボクが止める間もなく、世界一の美乳と呼ばれるオッパイが覗いて見えそうだ。 「ちょっ、ちょっと何してるんですかァ?」  慌ててボクはアリスが脱ごうとする手を制した。このまま黙って見ていれば、目の前で全裸になりかねない。 「ンうゥ、何って、決まってるでしょ。服を脱ぐのよ」 「マッマジでェ……?」 「なんなの。ポチローの家ではお風呂へ入るのに服を脱がない(なら)わしなの?」 「ど、どんな習わしですか。ありませんよ。そんな謎めいて如何(いかが)わしい習わしなんて」 「じゃァ、良いじゃん」  また脱ごうとするので、狼狽(うろた)えるように彼女を抑えた。 「ちょッ、ちょっと、待ってくださいよ。リビングで脱いでどうするんですか。バスルームに脱衣所がありますから……。あッ、あっちで脱いでくださいよ」 「ああァら、サービスじゃん。ポチローに」  アリスは(なまめ)かしくウインクして微笑んだ。完全にボクを(もてあそ)んでいるようだ。 「ううゥ、サービスってェ……?」  確かにこの上なく嬉しいサービスだが、目の前で全裸になるのは勘弁してもらいたい。腹ペコの猫の前にカツオ節をぶら下げるようなモノだ。いくら草食系のボクでも我慢の限界がある。 「なんなら、ポチローも一緒にお風呂へ入ってボディ洗いでもしてあげようか?」 「ええェ……? ボッ、ボディ洗いですか。けっ、結構です」  視線を逸らせて首を激しく横に振った。またとないラッキースケベのチャンスだが、ここで誘惑に身を任せるワケにはいかない。  アリスの(なまめ)かしい提案に身体じゅうが熱く火照(ほて)ってきた。一気に全身から汗が滲んだ。 「フフゥン、じゃァ玄関に置いてあるキャリーバッグを持ってきなさい」  上から目線で命じられた。 「えッ、キャリーバッグですか」 「そうよ。着替えが入ってるから。まさか真っ裸でポチローとカレーライスを食べるわけにもいかないでしょ」  またアリスは茶化すように微笑みを浮かべた。 「真っ裸でってェ……。そりゃァそうですけど。わ、わかりましたよ」
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