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カレーライス
とにかくボクは自分でも嫌になるほどチキンハートで臆病者だ。危ない橋はできるだけ渡りたくない。これまでずっとそうして生きてきた。性分なので仕方がない。
妖艶な小悪魔のアリスとアイスコーヒーを口移しなんてしたら後戻りできないだろう。きっとセクシークイーンに溺れて取り返しがつかなくなりそうだ。
興奮からだろうか。武者震いが止まらない。
「ふぅ……」
取り敢えずキッチンで深呼吸をし落ち着きを取り戻そうとした。
カレーライスをよそってアリスのもとへ運んだ。香ばしいカレーの匂いが辺りに漂っていった。
「ハイ、どうぞ。アリスさん」
カレー皿を彼女の前に置くとフワッと湯気が立ちのぼっていく。熱すぎず良いあんばいだ。
「ああァら、スゴく美味しそうねえェ」
アリスは嬉しそうに匂いを嗅ぎスプーンを手に持った。
「ハイ、そうですね。福神漬けもありますから、辛かったらお好きなようにかけてください」
量販店で買った国産の福神漬けだ。これだけでもご飯にかけるとオカズになるので重宝している。
「フフゥン、そうね」
言われた通りカレーの横に福神漬けも添えた。
「あと辛口ですから辛いのがダメなら言ってください。カレーの上に半熟玉子をかけると辛さがマイルドになるそうですので」
試したことはないがネットに書いてあった。
「大丈夫よ。少しくらい辛くても」
「本当は、明日の方がもっと美味しいですけどね」
我が家直伝のカレーは一日寝かしたモノが絶品だ。ジャガイモやニンジンにも味が染み込んでコクが出る。
「フフゥン、それは嬉しみねえェ。じゃ、戴きまァす」
アリスは微笑んでひとくちカレーを食べた。
「……」ボクも彼女の反応を見守った。
まさか、面と向かってマズいとは言わないだろうが反応次第ではモチベーションが違ってくる。
「わァ、美味しい」
アリスは満面の笑みで絶賛してくれた。
「そうですか。良かった」ホッとした気分だ。
「こんなに美味しいカレーを食べたのは久しぶりよ」
アリスが美味しそうに食べるので見ているこっちまで嬉しくなってくる。
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