母親

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母親

「変な遊びッて。ボクがそんなことするはずないだろう」  ボクのことを信じてほしい。けれどもボクのウソは母親にはすぐにバレてしまった。 『何よ。怪しいわね。イチローが、まくし立てるように早口になる時は、何か隠しごとがあるのよ!』 「えェ……、いやァ隠しごとなんかないってば」  さすが母親だ。ボクのクセを見抜いている。  しかし今さら隣りの部屋にセクシークイーンが引っ越して来たなんて告白できない。  しかも彼女は、ウチのお風呂に入ってバスタオル一枚巻いただけの(あら)わな格好だ。  さらに、ボクが母親の電話に応対している際中もアリスはボクの下腹部に(また)いだままTシャツの中へ手を滑り込ませてきた。 「フフゥン」まるで小悪魔みたいな笑顔だ。  イタズラするようにボクの敏感な部分へ指先を這わせていく。 「ああァッ、そこは、バカッ」  くすぐったくて、つい(きたな)い言葉を口走(クチばし)ってしまった。 『なんですッて。イチロー。誰に向かってバカなんて言ってるのよ』  すぐさま母親は電話の向こうで怒鳴り返してきた。 「いや、違うンだよ。お母さんにバカって言ってるんじゃないんだ」  ボクはなんとか身体を左右に(よじ)って、アリスがイタズラするのを()けようとした。 「フフゥン、もっと良いトコ触ってあげようか」  アリスは挑発するようにボクの耳元で(ささや)きかけてきた。 「ど、どこ触ってんですか……」  ついボクは反射的に喚いていてしまった。 『はァ、なに言ってるの。イチロー。『どこ触ってる』って、何よ?』 「いやァ違うんだよ。お母さん」  なんとか、ごまかすのに必死だ。  
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