ジェノサイド・エンジェル

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ジェノサイド・エンジェル

「ジェノサイド・エンジェル? 虐殺(ぎゃくさつ)天使って、ずい分物騒なネーミングねえェ……」 「なぁに、大したことはないさ。ただのヤンチャなヤツらの同好会だよ」  聖矢は力なく笑った。 「はァ……、どこが同好会よ。結局、半グレ集団なんでしょ」 「ハッハ、ッか。たしかにな。売られたケンカを買っていたら、『紅い蜘蛛』の連中と抗争(ケンカ)になっただけだよ」  「なによ。それッて……、バカみたい」  アリスは眉をひそめた。 「まァ、だからお嬢様。オレなんかと関わってもロクなことはないんだよ。わかったら、とっとと帰ってくれよ」  聖矢は倒れるようにベッドへ横になった。 「じゃァ、解熱鎮痛(ちんつう)剤か、何か薬を飲む?」 「いいよ。ほっとけよ。寝てりゃァそのうち治るさ」  面倒くさそうに応えた。 「フフゥン、強がり言って。薬はどこなの?」  アリスは寝室を出て他の部屋を探して回った。 「その辺にあるだろう。ううゥ……」  アゴで示したが、かなり傷が痛むのか小さく呻いた。 「ほらァ、やっぱ痛いクセして」  呆れたようにつぶやいた。  リビングを探しているとアンティークなキャビネットに写真(フォト)フレームが幾つも並んでいた。  綺麗な女性と子どもの写真だ。可愛らしい美少年だ。聖矢の子どもの頃の写真なのだろう。おそらくこの隣りの美女が母親なのだろう。聖矢に似て顔立ちが整っている。 「フフゥン、可愛らしいわねえェ……」  アリスはフレームを手にして微笑んだ。  ようやくクスリ箱を見つけ部屋へ戻った。 「あったわよ。さァ、解熱鎮痛薬(クスリ)を飲んで」  アリスは聖矢の上体を起き上がらせようとした。 「フフゥン、じゃァ、口移しで飲ませてくれよ。女医センセ」  まだジョーク交じりの強がりを言ってウインクをしてみせた。 「え、口移し……?」  さすがにアリスも躊躇(ためら)った様子だ。
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