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目を開けると、そこは見た事がない天井が広がっていた。
木目調の和風な天井、親戚の家はコンクリートの天井だった。
知らない場所で、ボーッとする意識の中…ヒソヒソとした話し声が聞こえた。
「かぜだって」「かぜって何?風?」「バカだなぁ、風邪って言うのは」と子供の声が聞こえた。
横を見ると、同じ歳くらいの男の子三人が俺が寝る横に座っていた。
俺の姿を見るとびっくりしたのか、一人の短髪でスポーツが得意そうな男の子の頭の上に狐の耳が生えた。
それに俺もびっくりして目を丸くしていると、黒い髪の男の子に頭を叩かれていた。
叩かれた頭を押さえて文句を言っていて、喧嘩になっていた。
「君達、病人の前で何やってるんですか」
『ごめんなさい』
怒られた三人の男の子達は、部屋の隅っこに座り大人しくなった。
代わりに俺の横に、腰まで長い綺麗な青っぽい黒髪を後ろで束ねている青年が座った。
風邪、そういえばちょっと朝から体調が優れていなかったけど風邪だったんだ。
「なにか食べれる?」と聞いてきて、その声に聞き覚えがあった。
頭がズキズキ痛くて、怠いけど青年にしがみつくように服を掴んだ。
倒れそうになった体を青年は支えてくれて、背中を撫でてくれた。
やっぱり、この優しい温もり…間違いない、あの方だ。
神様なんだ、人の姿になるのも簡単なのかもしれない。
「お狐様、ですか?」
「この姿で会うのは初めてなのに、よく分かったね」
「忘れた日はありませんでした、俺……ごほっ」
「無理はしないで、ほら…お粥作ってみたんだ…食べれるかな」
お狐様にそんな事をさせるわけにはいかない、そう思っても頭が働かない。
スプーンを口元に持ってきてもらい、小さく口を開けて喉に流し込む。
こんな優しくされたのは、両親が生きていた時以来だろうか……嬉しい筈なのに、いつもお狐様の前で泣いてしまう。
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