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謝ろうとしたが、その前に人差し指で唇を塞がれた。
お狐様はとても困った顔をしているけど、俺が世話の掛かる子供だから呆れられた?
いい子になるから、何でもするから…捨てないで、嫌わないで……お狐様に嫌われたら俺は…
「まだ少し熱があるんだから無理してはいけないよ」
「ご、ごめんなさい…」
「君がする事は謝る事じゃない、早く元気になって笑ってほしい…それだけだよ」
笑う?…それだけでいいの?でも、お狐様が謝る事を求めていないなら、俺は「はい」という返事だけをした。
食事を聞かれて、腹は空いていないが食べないと薬が飲めないからいただく事にした。
お狐様が後ろにある襖に向かって声を掛けると、昨日の三人が襖の隙間から覗き込んでいた。
ゆっくりと襖が開かれて、お粥と薬と水をおぼんにそれぞれ乗せて三人がやって来た。
黒髪の男の子がお粥をスプーンで掬って食べさせてくれた。
申し訳ない気持ちだったが、せっかくやってくれるのに断るのはもっと失礼だ。
温かなお粥が体に染みて、ホッとした気持ちになる。
「ありがとうございます」
「…!もっと食べる?」
「はい」
「次は俺だろ!お前ばっかりズルい!!」
「お前はガサツだからダメ」
黒髪の男の子と短髪の男の子が喧嘩を始めてしまった。
どうしたらいいのか分からず、お狐様も二人を止めようとしていた。
俺のせいでこうなってしまったから、俺も止めようと口を開いた。
その口に無理矢理ねじ込むようにスプーンが入ってきてびっくりした。
歯とスプーンが軽くぶつかる音が聞こえて、隣を見たらもう一人の茶髪の男の子がスプーンを持っていた。
ニコニコ笑っていて、周りにいる人達は喧嘩も忘れて呆然としていた。
薬も飲んで、大人しく横になるとお狐様がずっと手を握ってくれた。
三人は睡眠の邪魔だとお狐様が部屋から追い出してしまった。
後で元気になったら、改めてお礼を言いたい…看病してくれてありがとうって…
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