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「お狐様…嫌だったら、それでも全然大丈夫…なんですけど」
「なに?」
「俺が、寝るまで…手…握ってて、いいですか?」
風邪ってこんなに心細いものなんだって、知らなかった。
いや、忘れてしまったんだ…両親といた時の事を少しずつ…
ずっと一人だったから、風邪で寝てても誰も看病してくれなかった。
両親がいた時はこうして手を握っていてくれていた。
今も夢で、起きたら現実が待っているようで怖かった。
お狐様にこんな事お願いするなんて、図々しいって自分でも思う。
だから、寝るまでじゃなくて…一瞬でも許してほしかった。
お狐様は驚いた顔をしていたが、すぐに表情が柔らかくなった。、
「言われなくても、そのつもりだよ…ここにいるから安心しておやすみ」
お狐様に言われて、今度こそ気持ちが安らいで眠りについた。
久々に、両親との楽しい思い出の夢を見た……幸せなあの時、もう戻らないあの日々…
無意識に流れる涙を綺麗な指先で拭うと、寝言なのか両親を呼んでいた。
これ以上は踏み込んではいけない、そう思っていても放っておけない。
襖からまた覗いている弟達の方を振り返って、口元に指を当てた。
音を立てないようにゆっくりと近付いてきて、彼の横で正座している。
我が一族に大切なものは縁、人と関わるためには必要な事。
ただ、彼と我らは違う種族…それ相応の犠牲がつきものだ。
「それでも幸せにしたい、そう思うのはいけない事なのかな」
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