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翌朝、すっかり元気になった俺はお狐様達に頭を下げた。
短い間でも、俺を看病してくれた…その事は俺の中で一生の大切な出来事だ。
またあの日々に戻るが、大丈夫だ…やっていけるように頑張る。
お狐様は俺に布を渡してきて、その布を受け取ると少しだけ中身が見えた。
お父さんからもらった木刀、折れてもう木刀とは呼べなくなってしまったもの。
いくら折れたとしても、思い出は決して折れたりしない。
「神社で倒れていた時、大切に抱えていたから…大切なものなんだろう」
「はい、拾っていただきありがとうございました」
涙が出そうになったが、もう情けなく泣く姿を見せたくなくてグッと我慢した。
お狐様は木刀を抱きしめる俺の手に手を重ねていた。
その手は頬に移動して、優しく撫でられて俺は笑顔を見せた。
心配そうな顔をしているお狐様に全てをみすかされている、そんな感じがした。
だから、心配掛けてはいけない…これ以上俺で表情を曇らせたくない。
お狐様から出た言葉は衝撃的で、俺の思考が一瞬止まった。
「私達は、これ以上君に関わる事は出来ない」
「………え」
お狐様を怒らせてしまった、やっぱり甘えてしまったのはダメだったんだ。
視界が真っ暗になって顔色が悪くなる、もう…会えない?
どうしよう、どうしよう…どうしたらいいのか分からない。
ぐるぐる考えていたらお狐様が「ちょっと待って、勘違いしないで」と優しく言ってくれた。
勘違い…?どういう事?その言葉の通り俺と関わりたくないって事じゃないのか?
お狐様の顔を見ると、逆に謝られて俺は謝られる事をされた覚えがなくて戸惑った。
「人と妖と呼ばれる私達のような存在は普段関わってはいけない関係なんだ、だからこれ以上は縁が大切なんだ」
「えにし?」
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