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「あっ、あの人たちって同じ高校の人よね」
「そうね、ついて行けばいいわ」
俺が三人を見事に案内して尊敬のまなざしを浴びる──。地上に出た瞬間、早くもそんな妄想は消え去った。
確かに、河原町のアーケード街を東に向かって歩いているのは見覚えのある人ばかり。それもそのはず、今日は俺たちの高校の卒業遠足なのだから。
とはいえ、受験まっさかり。遠足への出席は自由。実際、俺たちは悠也、竜崎さん、由比さんという班構成で来ているが、本来ならばあとふたりいるはずだった。彼らは受験を理由に欠席した。
いや、そんなことは正直どうでもいい。彼女である竜崎さんが遠足に参加している。そして、同じ班のメンバーである。とりあえず、俺にとってはそれだけで天に昇るほどの幸福感を覚えていた。
だから俺は、何とかして竜崎さんの隣を陣取りたい。だが、由比さんと楽しそうに話すのを邪魔するのは気がひけて……。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、隣を歩く悠也が顔をのぞいてくる。
「横が俺じゃ、不満かー」
「い、いや、そんなことない」
思わず表情に気持ちを込めてしまう。そんな俺に、悠也が向ける顔は余裕そのものだ。くそっ、これが年上の女性とつき合っている余裕なのか。
「かわいいのぅ。真也くんは」
「んだよ……」
いちいち癪に障る。だが、それが心地いいことも確かで……。だから、悠也の前ではついつい素直になってしまう俺だ。
「俺だって、今日は竜崎さんと……」
「はいはい、わかったから。せいぜい頑張って!」
適当にあしらわれたことに腹を立て、俺は速足で歩き出した。
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