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序文
BLの二次創作。それは宇宙空間に匹敵する広さと深さをあわせ持つ、豊饒な娯楽領域であります。その広大さ、底なしの深さは見る者に畏怖を植えつけ、男性族を光年単位で遠ざけ、同士を血よりも濃い絆で結束することもあれば、推しキャラが攻めか受けかの相違だけでイギリス王朝をめぐる王位継承レベルの紛争が勃発する。
わたしには瘴気漂う沼の底に沈殿する、嫌気性細菌のようにドロドロに腐敗した実妹がおります。幸か不幸か仲はよいので、実家に帰省するたびに推しのすばらしさやBL界隈の基礎知識――のちには応用知識――などを叩き込まれておりました。妹から英才教育を施されたわたしはもはや、気づけばどこへ出しても恥ずかしくない立派なBL研究家となり果てていたのです!
2023年のお正月、相も変わらず妹から垂れ流されるBLの奔流に押し流されていたわたしは、長年の疑問に挑戦する時期がいよいよ到来したと確信しました。その疑問とはずばり、
なぜ腐女子が存在するのか?
であります。
本エッセイは(少なくとも男性にとっては)謎に包まれたBLと呼ばれる不可解な分野を、科学的に解明していこうという大胆な試みとなります。わたしは本エッセイを思い込みや単なる憶測で終わらせるつもりは断じてありません。BLが無視できない数の女性に膾炙している以上、必ずなんらかの原因があるはずです。わたしはその原因を自然科学から解き明かせるはずだと確信しているのです。
最後に本エッセイの構成を記載しておきます。
1章ではこの分野になじみのない読者に向けて、BLの概要説明に充てています。男性読者の九分九厘は予備知識がないかと思われるので、ぜひご一読ください(女性読者はオミットしていただいてかまいません)。
2章では本エッセイの根幹をなす科学理論である進化論をご紹介いたします。素養のある読者はオミットして大丈夫です。そうでない読者は拾い読みでもかまわないので目を通してみてください。BLの本質を解き明かすこと以外にも、進化論はあらゆる人間活動を説明できる非常に優れた科学理論です。これを知らないままで人生を渡るのは、竹槍でB29スーパーフォートレス爆撃機を撃墜しようとするようなものです。
3章ではいよいよBLの存在意義、女性にのみ好発する理由などを進化論的に解き明かしていきます。これが本エッセイの白眉となるでしょう。
終章ではBLの法的地位や今後の課題など、著者が気になるトピックについて脈絡なく書いていく予定です。
巻末の参考文献では、主に進化論に関する発展的な書籍を紹介しています。科学を学ぶにあたり、もっともやってはならないのがネットで適当に知識を拾うことです。素性もわからない、著者以外に誰ひとり推敲もしていないような代物から正しい科学知識が得られるはずがありません。
本エッセイに書かれている内容を鵜呑みにするなんて問題外です。専門家が書き、編集者がチェックした紙の書籍から知識を吸収するのが結局は近道になるのですね。興味のある向きはいくつか手にとっていただければ幸いです。
それではめくるめく白昼夢の世界、BL二次創作へようこそ!
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