処し難(にく)い男

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西高東低の気圧配置であり、私は五次産業を敵に回していた。桃色バッチを拒否した私のロジックは偏見に満ち、どうせ、新参者を食いものにする気だったのだと、思えていた。「空輝っ!」私は自分の名を叫んだ。時折、雄輝の奴が呼んでいる気がしたからだ。居た堪れなくなった私はゲシュタルト崩壊の様な叫び声を上げていた。「うるせぇなぁ…あんちゃん新入りか?あっははっ!新入りは食いものにされるのがオチだぞ?」スキンヘッドの眉無し巨人の熊谷さんは、片手でスチール缶を潰す。土木作業に腕力は必須だ。私も熊谷さんに肖り、スチール缶を片手で潰せる設定にしていたのだった。「熊谷さんっ!片手でスチール缶潰せる様に為りました!」私は屈託のない心持ちで、そう発した。「あっははっ!またボケたか?何度目の達成感か知らんが…馬鹿力じゃ土木作業は難しいだろ?」熊谷さんは木材の上にドン座り、笑んでいたのだった。「この現場はイカれている!!あっははっ!気付きましたか?矛盾点にっ!」私は目をかっ開き、熊谷さんのドン座る木材をべしべし叩いていた。
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