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しかし、熊谷さんは片手で1tの岩石を持ち上げる。とは言え、業社側もそこまでの労力とは思わず、世迷い言に仕立て上げようと、片手でスチール缶潰せる男、熊谷…雅経(くまがいまさつね)だった。私もその一旦を担う男さ…。「岩石を軽々しく持ち上げようにも、掘削後のトラック搬送があちら方の予定だったからな?あっははっ!雅経ちゃん!止めたってよ?トラック可笑しくなっちゃうやん?てなってさ?結局、元の位置に障害物でもある岩石を置き直しました…。」熊谷さんは打ち拉がれていた。私はこの話を何度も聞いている。「く、熊谷さんは私のことを何も知らないっ!」私は意を決して、言ったのだ。「あっははっ!お前は人殺しだ。岩石のキャッチボールしたいのか?」熊谷さんは私がそう言うとこう言って来る。私は居た堪れなくなり、号泣するのだ。「うぅっ…雄輝…どうして私は殺せたのか…うぅっ…。」私が号泣すると、熊谷さんは肩を抱いて、エンパシーを強めるのだった。「量子縺れよな。時空警察も隠匿罪の皺寄せやって言ってるし、空輝が目を開いた時には素手で雄輝ちゃんの心臓穿(つらぬ)いてたんやろ?」熊谷さんは真摯に現実を受け止め、私に問うてくれた。「はい…無意識レヴェルか…無我の域か…私は雄輝を殺した…。」その衝撃に比例して、対象は後方にすっ飛ぶが、私の拳打がそれを凌駕し、雄輝の心の臓を穿いたのだった。無我の域、境地と私は自尊心を持っていた。
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