お客様サービス相談センター

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お客様サービス相談センター

「お電話ありがとうございます。〇×お客様サービス相談センター、△△でございます」  お客様サービス相談センター、お客様相談窓口、カスタマーセンター、サポートセンター、ヘルプデスク……等々、名称は様々あれど、ユーザーからの問い合わせに対応する専用部署を総じて「コールセンター」という。かつて企業へ問い合わせる手段は、手紙だけだった。やがて一般家庭への電話の普及に伴い、問い合わせ手段は電話に移行し、コールセンターが続々と誕生した。この流れは1980年代半ばに始まり、現在ではコールセンターを設けていない企業の方が珍しい。  ユーザーがコールセンターに電話をかけると、まず最初に音声案内が流れ、「△〇のお問い合わせは1、〇△のお問い合わせは2、……」と選択させられた経験はないだろうか?  この音声案内システム(Interactive Voice Response)(IVR)を始め、電話回線とパソコンのシステムが融合したコールセンターシステム(CTI)(Computer Telephony Integration)が構築されたのは、1990年代だという。IVRの他にも、一般的なコールセンターシステムには、回線を取りまとめ、通話対応していないオペレーターの電話機に新着の電話を繋ぐ機能(ACD※1)や、ユーザーとの通話を保留にしたまま、オペレーターが上司にコンタクト出来る機能(PBX※2)が付いている。更に、顧客情報管理(CRM※3)にも対応していて、ユーザーの発番号を元に過去の問い合わせ内容を照会することも出来る。  ちなみに、私が働いていたコールセンターは2000年頃に立ち上げられたそうだ。古株のオペレーターさん達の話によると、その頃はまだコールセンターシステムは導入されておらず、オペレーターはぶ厚い紙の資料を捲りながらユーザーからの質問に答え、通話後に問い合わせ内容をパソコンに文章入力していたのだという。コールセンターシステム導入後は、ユーザーからの入電を受けると自動的にパソコン画面上に「案件記録画面」が表示され、オペレーターは大まかに分類された「問い合わせ内容一覧」から該当する項目を選択し、保存する。簡単な問い合わせなら、通話対応中にサクッと項目を選択し、ユーザーの切電と同時に「案件記録」を保存して、次の入電を待つ。システムの導入によって作業効率は大幅に向上し、顧客対応受電数も比例して伸びた。ユーザーに取っては、コールセンターに繋がり易くなるから満足度が上がるし、企業に取ってはひとり当たりの作業量が増えるから人件費を抑えることが出来る。デジタル化がもたらしたwin-winの構図の典型例だ。  ところが、肝心の労働者は、このwinに加われていない。コールセンターのオペレーターの多くは正社員ではない。時給制のパート・アルバイト、派遣社員だ。作業量が増えたからといって賃金に反映されるわけでも、ましてや昇級するわけでもないのだ。むしろ新システムが導入される度に、覚え慣れるのに苦労させられてきた――古株さん達は口を揃えて憤る。そういえば、私もこのコールセンターには約8年10ヶ月働いていたけれど、この間に少なくとも4回はシステムの変更があった。その都度、管理者達は「以前より良い」と説明したが、どこが良くなったことやら、ついぞ分からなかった。そして、お決まりのように導入直後はシステムトラブルが発生して、てんやわんやを経験したものだ。  このエッセイでは、私がコールセンターで経験したアレコレを振り返ってみようかと思う。エラそうなことを言うつもりはない。単なるポンコツオペレーターの戯れ言と笑い飛ばしてくれて構わない。 ーーーーー ※1 ACD(Automatic Call Distributor)着信呼自動分配装置 ※2 PBX(Private Branch eXchange)構内交換機 ※3 CRM(Customer Relationship Management)顧客関係管理
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