21人が本棚に入れています
本棚に追加
「おはよう。ちょっといいかな?」
朝学校に行くと早速先輩が一年のフロアまで来て話しかけてきた。
和泉恢。弓道部エースかつ確実に学校で一番モテているであろうお方。
今日もイケメンは絶好調のようだ。
わ、2年生の女の子が消化器の後ろのスペースについてきてる。
あんなふうにモテたい。
じゃなくって。
「あ、はい。今ですか?」
「出来れば。」
「了解です。」
昨日はごめんね…そして申し訳ないんだけれど、昨日のことは胸に収まっておいてくれるかな?俺と君だけの秘密にしてほしいんだ……みたいなこと言われるのかな。あの顔に?うわ惚れてまうやろ。
とかなんとか考えながら先輩に連れられてきた、特別棟の奥の奥。
あんまり1年生には縁のない場所。
ちなみにここまで無言。若干一方的な気まずさを感じる。
物理準備室と書かれたそこをノックもなしに先輩は開けた。
「ルイー?いるー?」
友だちを呼ぶテンションで呼んでいる。おぉい、先生いたらどうすん…
「いんぞ。」
いるやんけ。
こちらに向かってくる足音がする。
誰だ。と思ったら、物理教師の灰月先生だった。
1年生には物理の授業はないけど、テニス部のイケメン先生として人気なので知っている。
先生と先輩は仲がいいのか…幼馴染とかそういう感じかな。初めて知った。
でも先生に向けてタメ口はあまり良くないと思います。言いませんけど。
「あ、こんにちは。」
「はいどうも。今日はなんのようかな?カイの友人くん?」
僕に聞くな。
「用があるのはオレ。昨日こいつの血飲んじゃってさ。どうしよっかなーって。」
灰月先生は天を仰いだ。
灰月先生そっち側なんか………。
「まじか。どうすんの?記憶消すか?」
記憶を消す?
吸血鬼には能力とかはないはずだけど。
あくまでも普通の人の延長線みたいな感じだったような、きがする。ちゃんと授業受けてればよかった。文化の石原先生ごめんなさい。あなたの声は僕にとっての安眠の湯でした。
「いや、嫁にしようかなと。」
ぼんやり聞き取った耳が、ぼんやり単語を受け取った。
は?
よ、め…………?
よめってなんだっけ。
「……はい?先輩暑さで壊れました?」
「へー。相手は惚れてなさげだけど。大丈夫そう?」
「オブラートに包めよ。僕に魅力がないみたいじゃん。」
「事実だろ。なんだ。能力使うのか。」
「まだ、使わない。」
うわ、やばいやつだ。
と思ったけど、でもそんな能力とかあったら、今頃人類は吸血鬼に残らず食われて滅亡してるか、吸血鬼のペットとして生きているだろう。
ということは、先輩にそんな能力はない。
……なんだ、集団性厨二病か。罹患しちゃってるのか。
一歩物理準備室から出ようとすると、手首を強めの力で先輩に握られた。
おう、力強いな。
まさかこんなところで吸血鬼を感じるなんて思わなかった。嬉しくねえ。
最初のコメントを投稿しよう!