先輩が吸血鬼だったら後輩の僕はどう接すればいいんだ

2/6
前へ
/11ページ
次へ
「おはよう。ちょっといいかな?」 朝学校に行くと早速先輩が一年のフロアまで来て話しかけてきた。 和泉恢。弓道部エースかつ確実に学校で一番モテているであろうお方。 今日もイケメンは絶好調のようだ。 わ、2年生の女の子が消化器の後ろのスペースについてきてる。 あんなふうにモテたい。 じゃなくって。 「あ、はい。今ですか?」 「出来れば。」 「了解です。」 昨日はごめんね…そして申し訳ないんだけれど、昨日のことは胸に収まっておいてくれるかな?俺と君だけの秘密にしてほしいんだ……みたいなこと言われるのかな。あの顔に?うわ惚れてまうやろ。 とかなんとか考えながら先輩に連れられてきた、特別棟の奥の奥。 あんまり1年生には縁のない場所。 ちなみにここまで無言。若干一方的な気まずさを感じる。 物理準備室と書かれたそこをノックもなしに先輩は開けた。 「ルイー?いるー?」 友だちを呼ぶテンションで呼んでいる。おぉい、先生いたらどうすん… 「いんぞ。」 いるやんけ。 こちらに向かってくる足音がする。 誰だ。と思ったら、物理教師の灰月先生だった。 1年生には物理の授業はないけど、テニス部のイケメン先生として人気なので知っている。 先生と先輩は仲がいいのか…幼馴染とかそういう感じかな。初めて知った。 でも先生に向けてタメ口はあまり良くないと思います。言いませんけど。 「あ、こんにちは。」 「はいどうも。今日はなんのようかな?カイの友人くん?」 僕に聞くな。 「用があるのはオレ。昨日こいつの血飲んじゃってさ。どうしよっかなーって。」 灰月先生は天を仰いだ。 灰月先生そっち側なんか………。 「まじか。どうすんの?記憶消すか?」 記憶を消す? 吸血鬼には能力とかはないはずだけど。 あくまでも普通の人の延長線みたいな感じだったような、きがする。ちゃんと授業受けてればよかった。文化の石原先生ごめんなさい。あなたの声は僕にとっての安眠の湯でした。 「いや、嫁にしようかなと。」 ぼんやり聞き取った耳が、ぼんやり単語を受け取った。 は? よ、め…………? よめってなんだっけ。 「……はい?先輩暑さで壊れました?」 「へー。相手は惚れてなさげだけど。大丈夫そう?」 「オブラートに包めよ。僕に魅力がないみたいじゃん。」 「事実だろ。なんだ。能力使うのか。」 「まだ、使わない。」 うわ、やばいやつだ。 と思ったけど、でもそんな能力とかあったら、今頃人類は吸血鬼に残らず食われて滅亡してるか、吸血鬼のペットとして生きているだろう。 ということは、先輩にそんな能力はない。 ……なんだ、集団性厨二病か。罹患しちゃってるのか。 一歩物理準備室から出ようとすると、手首を強めの力で先輩に握られた。 おう、力強いな。 まさかこんなところで吸血鬼を感じるなんて思わなかった。嬉しくねえ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加