謝らないよ ☆

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謝らないよ ☆

「優美ちゃん、上下するからね。絶対落とさないから安心して」  正樹の声がしたかと思うと、私の体が上下にユサユサと揺さぶられる。  支えている正樹は膝を軽く曲げて、体全体を使っているんだろうけれど、私の体重すべてが彼の筋力に掛かっているのだと思うと、不安で怖くなる。 「待って……っ、まっ……、ぁ、――あぁあっ」  グズグズに泣いてしまっている顔を、慎也に正面から見られる。  彼は正樹の動きに合わせて腰を突き入れながら、私の反応を見てとても興奮しているようだった。  何十回も揺さぶられている間、私は緊張と興奮、不安も相まって何回も軽く達してしまった。 「あ……っ、僕、ちょっと、出るかも」  正樹が言い、私を再度ベッドまで連れて行ったあと、ベッドの縁にうつ伏せにさせ、ラストスパートにズグズグと細かく腰を打ち付けてきた。 「あー、出る……っ、ん、きつい……っ」  後ろから荒くなった正樹の呼吸音が聞こえ、それだけで私も興奮してしまう。  やがて正樹は押しつぶすように私を抱き締め、後孔で吐精する。  耳元でハァッハァッという彼の呼吸が聞こえ、唇を舐め、唾液を嚥下する音までも聞こえる。 「やっば……、気持ち……」  そう呟いたあと、彼は繋がったまま私の体ごと仰向けにさせ、パカリと私の脚を開いて見せた。 「慎也、お待たせ」  正樹が指で私の蜜壷の濡れ具合を確認し、指でクパ……と左右に秘唇を開いた。 「優美、とろけきった顔して……。本当に好きだな」  そういう慎也だってまんざらでもない顔をしている。 「もうちょっと耐えてくれな」  慎也は私の頭を撫でて、チュッとキスをしてからまた挿入してきた。  何回も体位を変えていたけれど、途中で道具を使ったりもあり、彼の興奮は大分高まっているようだった。  慎也はすぐに遠慮なく濡れそぼった私の蜜壷を蹂躙し、腰を叩きつけてくる。 「んっ、んぁあっ、あっ、ん、んーっ」  ドッドッと子宮口に遠慮なく亀頭を叩き込まれ、私は目の前がチカチカするような感覚を味わいながら、正樹の体の上で悶え抜く。 「優美ちゃん、もっと気持ちよくなれるよう手伝ってあげるね」  正樹が言い、今度は指で私の陰核をクリクリと撫で、弄ってきた。 「んぁああっ、やぁああ……っ、気持ちい……っ、あっ、ぁっ」  涙を流し膣奥をヒクつかせる私を見て、抽送に従って揺れる乳房を揉みしだく慎也は、唇を舐めてからラストスパートに入った。 「優美……っ」  私の名前を呼んで、少し強いぐらいの力で乳房を揉んでくる。  二人の男にずっぷりと犯され、征服されたまま、私は今日一番の快楽を得て思いきりいきんで絶頂していた。 「んんーっ、あぁああぁあ……っ!」  慎也の腹部に潮を飛ばしてしまう。  けれど自分では制御できないし、ジョパッ、ジョパッと断続的に出る透明な液体を、涙を湛えた目で見るしかできない。  恥ずかしくて、気持ちよくて、頭の中はグシャグシャだった。  慎也が両手で私の腰を掴み、ズンッと思いきり突き上げ、吐息と共に腰を震わせる。 「優美……っ」  膣内で、彼の肉棒がビクビクと震えているのが分かる。  慎也は陶酔しきった顔で、二度、三度と腰を押しつけ、最後の一滴まで精液を絞り出した。  ――終わった……。  そう思って気が抜けただけで、私はあっけなく気を失ってしまった。  ふわ……、と目が覚めて、瞬きをする。  知らない天井がある。  キョロ……と目を動かして内装を確認し、ここがラブホだと思いだした。  身じろぎすると、反射的に左右から私の体にまわっている腕に力がこもる。  いつものように、正樹は私の右側、慎也は左側。  仰向けになって寝ている私のほうを向き、体に額をつけてスウスウ寝息を立てていた。  まだ早朝なのか、ホテルの周囲は静かだ。  郊外にあるからかもしれないけれど、この静けさがどことなく愛おしくありがたい。  ゆっくり溜め息をつくと、昨晩の同窓会での出来事が蘇る。  まだ情けない気持ち、ムカつく気持ちはあるけれど、大分落ち着いている。 「……二人の、……ううん、四人のお陰だなぁ……」  小さく呟き、微笑む。  今の私は、二人にたっぷり愛されて幸せいっぱいだ。  二人の事しか考えられないぐらい愛されてからの、朝チュンである。  気持ちがホコホコしていて、これ以上なく満たされている。  昨日、慎也が私の婚約者だと知って、「なんで折原にこんないい男が」って顔をしていた同級生を思いだした。  優越感を得る私を、許してほしい。  皆が見下していたデブにだって、幸せになる権利はある。  頑張ったら認めてくれる人がいる。  昔は太っていても、そんなの関係なく〝今〟の私を評価してくれて、魅力があると感じてくれる人がいる。  彼らは、私が自分の努力で勝ち取った人たちだ。  もとを言えばトレーナーさんのお陰だけど、精神を叩き直して努力した私への、ご褒美だと思っている。 (謝らないよ)  心の中で、私をバカにしていたクラスメイト達に告げる。 「折原のくせに生意気」と思われても、「身の丈に合わない相手に囲まれてごめんなさい。今すぐ縁を切ります。デブに相応な地味な生き方をします」なんて、口が裂けても言うもんか。 「そんな事を言うなら、今後一生縁を切ってもいい」  小さく呟き、決意を胸に宿す。  正樹が言っていたように、クラスメイトは進路の途中で一緒に過ごすようになっただけの人だ。  その中で友達ができる事はあるけれど、全員じゃない。  卒業したあと、印象の薄い人ならすぐ名前を忘れてしまう。そんなもんだ。 友達は一生大切にしたいけど、同級生というだけで私の人生に図々しく幅を利かせてなるもんか。 「……僕とは縁を切らないでね」  むにゃり、とした声で言い、正樹が私の頭を撫でてくる。 「おっ、起きてたの!?」  焦って彼を向くと、後ろから慎也が私の体を抱き寄せた。  正樹は枕元に手を伸ばし、高級腕時計をジャラリと音を立てて持ち上げる。 「……ん、五時。大体、いつもこれぐらいには目が覚めてるから、自然と目が覚めてたよ」  彼の言葉を聞き、私は溜め息をつく。 「ちゃんと寝てる?」 「んー、だって僕ら割と早寝じゃん。二十二時すぎにはベッド入ってる事だってあるし。そりゃあ、遅くなる日もあるけど、倒れないように気をつけてはいるよ」 「それならいいけど」 「理想の睡眠時間は八時間って言うけど、加齢と共に少しずつ短くなっていくんだって。寝過ぎても死亡リスク高まるみたいだし、体が分かっていたらそれでいいんだよ」  正樹は「んーっ」と伸びたあと、ゆっくり起き上がる。  ベッドの上で胡座をかいたまま、さらに念入りに上半身のストレッチをし始めた。 「優美、気持ちは落ち着いた?」  慎也に尋ねられ、苦笑いする。 さっきの独り言、聞かれてたの恥ずかしいな……。 「お陰様で」 「なら良かった」  慎也も私の頭をよしよしと撫で、ついでに額にキスをしてきた。 「……ここで俺が、優美のクラスメイトを悪く言うのは、また別なんだろうな」  溜め息混じりに彼が言う。 「かもね。悪く言ってもらって、一緒に不満をシェアできたらスッキリすると思う。けど、二人は私と話が弾むからこそ、不満が相乗効果で大きくなるのが怖い」 「確かに、そうだな」  本当に、気持ちはありがたい。  文香にも何かあると聞いてもらってるし、お互い「悪くないよ」と言い合って最後は満足してる。  けれど、話が合うこその弊害もある。 「分かるー!」ってなるから、恨み辛みが倍増して燃え上がっていく。  本当なら一人で抱えて、ある程度落ち着かせる事ができるものなのに、人と不満を共有すると、どんどん調子づいてしまう。  本来〝三〟ぐらいだった不満が、気がつけば〝七〟にも〝八〟にも膨れ上がる。 「この人は私の気持ちを分かってくれる」という信頼感から、愚痴を話すと気持ちいい。  けれどその気持ちよさに甘えて愚痴を膨らませれば、私も佐藤さんたちと似たような存在になるだろう。  どれだけこちらに正義があっても、やりすぎはよくない。  だから、自分の中で「ここまで」と決めたあとは、自分自身の傷として抱えたいと思っている。  その塩梅が、難しいんだけどね……。  なので私はこう提案した。 「あのね、しんどくなったら甘やかしてほしい」 「ん、どんだけでも」 「ネガティブはあんまり吐きすぎると無限ループになって心身共に良くないから、つらくなった時は、ひたすら褒めて甘やかしてほしい」 「僕にも任せて! 慎也と二人で、ダブル効果で思いっきり甘やかしてあげるから」 「ありがと! モヤモヤすると思うけど、ぎゅーってしてもらって、甘やかしてもらったらきっとすぐ治るから、あとは心配しないで」  そう言って、私はニカッと笑った。
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