春節

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「待って待って……今そんなこと言われると俺……ンァッ」  横抱きにされたまま耳に舌を差し込まれて、エッチな音で頭の中をいっぱいにさせられ、何も喋れない。  敏感な穴の中をじゅるじゅる舐められて、びくびく感じまくってるうちに、いつのまにか客間の奥のベッドに優しく横たえられていてた。  インジェンが後ろ手に仕切り布を引き、今や、狭い空間で二人きりだ。  ……とはいえ至近距離に、床に倒れたカラフがいるのだけれど。  投げ出した俺の両脚から、インジェンが素早くズボンと靴を脱がせてゆく。 「あ!」  自分で脱ぐのも人に脱がせるのも平気なのに、脱がされるのだけはやっぱり異常に恥ずかしい。 「待って、ほんと……ほんとに……ひゃっ」  起きあがろうとしたのに左の足首を握られて、それも叶わない。  綺麗な唇が俺の足の裏に口付けた上に、舌がくるぶしから指先までをざらぁっと舐め上げた。 「ァあッ……! そんな汚いとこはぁっ、舐めたら駄目です、本当にダメ……っ!」  振り払って拒みたいけど、それをしたらインジェンの芸術品のような顔を蹴ってしまいそうで、出来ない。  その間にも、決して綺麗じゃない足の指を一本一本しゃぶられて、甘い背徳感に慄(おのの)く。 「……好きだ、お前が全部愛おしい……汚い部分などない」  インジェンの唇が足首から膝裏、太腿まで移ってきて、ついに股の間まで来てしまった。 「だ、め……っ、今俺、溜まって、て……っあ!」  上衣の裾をめくり、その下のヌレヌレになっている先端をねっとりと優しく舐め回されて、客間の中なのに、エッチな喘ぎ声が止まらない。 「あっハぁっ……すぐいっちゃう、舐められるとすぐっ、イッちゃうから……っ、んッ……!」  溜まりに溜まったものが唇の淫らな陰圧で促され、奥から快感の塊がすごい勢いで噴き上げてくる。 「あぁぁッ! いや、……やっ」  とうとうインジェンの唇の中に激しくそれが放出されーー「待て」の後の久々の射精は、涙が出るほどに激しい快感だった。  ゴク、と音を立ててインジェンの喉仏が下がり、飲まれたのが分かって、カーテンの外にいるカラフのことなど薄れてしまうほど、エッチな奴隷モードにスイッチしてしまう。 「インジェン様……っ、申し訳ございません……、お口で達してしまいました……どうか、私を罰してください……っ」  エッチなお仕置きが欲しくて、自ら脚をM字に開き、膝の裏を両手で持って、射精の余韻でヒクヒクと疼くお尻の穴を見せつける。  いつもみたいに罵りながら指でお尻をいじってくれるかと思いきや、インジェンは紅潮した美しい顔に柔らかな笑みを浮かべ、聞いてきた。 「……お前は、健気で本当に可愛いな……口付けしたい。してもいいか?」 「……は、はい……?」  全く噛み合ってない会話に、一瞬何を言われたのか分からない。  そんな全くの無防備だった俺のお尻の狭間にインジェンががばりと顔を埋めてきて――。  って、健気で可愛くて口付けしたいの、そこ……!? 「やっ……! 汚いっ、汚いです、それは駄目……! ひぃっ」  蟻の門渡りから、ヒクヒク切ながるアナルまで、慈雨のような優しいキスがチュッ、チュッと何度も繰り返されて、頭が真っ白になる。 「ふぁ……むり……むりです……」 「しっかり脚を持っていろ……」  ご主人様に注意されて、反射的に両手に力は込めるのだけれど、今度は舌でアナルのひだをくすぐられ、未知の感触にお尻がガクガク震えた。 「あぅぅ……っ! だめ、そんな所舐めたらいけません、インジェン様、病気になっちゃう……っ、ぁぁあ……っ」  本気で心配して言ってるのに、深くまで舌を差し込まれて、クチョクチョ淫らな水音を立ててそこをほぐされ、お尻がはしたなく喜んでしまうのを止められない。 「あんっ、気持ちい……ほんとに、駄目ですってばぁ……っ、んっ、な、なにかっ、アッ、へん……っ」  とうとう快感が飽和して、インジェンの舌をぎゅう……っと締め付けると、恍惚感で穴全体が甘く痺れ、舌を受け入れるたび、ずっと軽くイキ続けてるような感覚に襲われる。  でもそれは、もっと太くて硬くて、熱いものを入れられた時の満足感には程遠くて。  そっちは貰えないのかと、勝手にお尻の奥がキュンキュン期待して……ひたすら切ない。  そんな俺の中をしつこくたっぷり舐め回して、俺がイき過ぎのヘロヘロになった頃、ようやくインジェンが唇を離してくれた。 「私の可愛いリュウ……口付けは気に入ったか……?」  何故かお尻に向かって、華やかな笑顔で聞かれた。  しかし尻は喋れないので、代わりに俺が涙目で頷く。 「……ナカ、が……トロトロになって、溶けちゃいそうです……殿下……」 「それは良かった。……どれ……本当によくとろけているのか、確かめてみるとしよう」  言葉とともに、長い指が二本、ずぶりと上から押し入ってくる。  そこは確かめるまでもなく、無抵抗にインジェンの指を受け入れた。  そのままグジュッ、グジュッと上下左右に動かされ、淫らに悶えながら喘ぐ。 「ふァッ……ア〜〜……も……駄目……かきまぜな、で……っ」 「柔らかいな……。それに、よく絡みつく……。リュウは私の指によく懐いているな……? 可愛いくてたまらぬ……」  だから、視線……!  さっきから何で俺の尻に話しかけてんの……!?  ヘイ、尻! ってか!?  仕方ない、もうこうなったらヤケだ。  俺はお尻を断続的に締め付けながら、自分の尻穴になったつもりで相手に声をかけた。 「すみませんインジェンさん。この指では足りません。もっと太くて長くて硬いものをお願いします」  なるべく尻っぽい口調で頼むと、インジェンがそわついて顔を上げた。 「もっと太くて長くて硬い……? あぁ……ちょっと待っていろ……すぐ持ってくる……」  ま、待っていろ……? 持ってくる……?  そんな蕎麦屋の出前みたいなこと言わなくても……今そこにあってすぐ出せる、硬くて太いもの……あるだろ……!?  自分の両脚を持ったまま困惑している俺の目の前で、インジェンが目隠しのカーテンを手で避けて外に行ってしまった。  思わず正気に返り、布団の中にあわてて潜り込む。  布団を被ったままカーテンを引っ張り上げて様子を伺うと、インジェンは客間におらず、後に残ったのは俺と、床に大の字でいびきをかいて寝ているカラフのみだ。  えぇ……太いものを探しにどこまで行った?  下半身丸裸のまま布団でソワソワしていると、誰か人が寝台に近付いてくる気配がした。  ひぇ……! だっ、誰……!?  身構えると、カーテンを避けて入ってきたのは、インジェンだ。 「なんだ、ビックリした……」  安堵していると、インジェンが右手に持ったものを俺に差し出した。  それは……牛の角を削って作られた筆管(ひっかん)の、太くて硬そうな……太筆だった。 「待って待って……俺が欲してるのはそれじゃない。それじゃなくてね」  両手で押し留めると、インジェンは部屋の中央を向いてドサリと寝台に腰を下ろし、俯いてしまった。 「え、どうした……?」  人形のように完璧に整った横顔が、暗く沈んでいる。 「……。私は、お前が私に何を求めているのか、いつもよく分からない。普通の人間と、ほとんど接したことがないから……。その上、畑仕事も手伝えず、物売りもできぬ……。お前ばかり働かせて、私は……」  つう、と美しい涙が頬に溢れた。  ……こ、今度は泣き上戸が現れただと!? 「いやいやいや、インジェンにそんなこと、求めてないよ! そもそも、インジェンはちゃんと立派に仕事してるじゃないか。……それに俺が求めてるのは……インジェンと、インジェンのちんちんだけだよ……?」  我ながら酷い言い方だけど、ほかに言いようがない。  すると、インジェンは無邪気な笑顔になって答えた。 「私と私のちんちんだけか……!」 「うん! そう!」  俺も笑顔で頷くと、彼はそのままバタッと後ろに倒れ、胸の上で指を組んだ。 「安心した。寝る」  そう言ったきり、お姫様は本当に規則正しい寝息を立て始めた。 「な、何ぃ……!? 貴様、今の流れでなぜ寝る……!?」  激昂した俺に思わずインジェンのキャラが乗り移る。  ……俺は妖怪のような素早さで床に飛び降り、寝台の外にはみ出した両脚から靴とズボン、下着を剥ぎ取った。  長袍をせっせと腰までたくし上げ、インジェンの陽根にしゃぶりつく。  吸ったり舐めたり可愛がると、安らかな寝顔の本人とは裏腹に、下半身は元気に反応してくれた。  うっかりイかせないように加減して、糸を引きながら唇を離し、いそいそと寝台に戻って――雄々しいちんちんの上に跨る。  もう一度顔を観察したけど、やっぱり安らかに寝てるなぁ……しかも右手に筆を持ったまま。  睡眠姦は趣味じゃないんだけど。  でももう俺、焦らされすぎて限界だから、ごめん……っ!  インジェンの厚い胸に両手を置いて、お尻の穴に屹立した雄頸の先端をしっかりと付け、少しずつ腰を下ろしていく。  先端が、ぬぷりと俺のトロトロのそこを押し拡げて……俺は、それを甘やかすように優しくいきむ。 「ンッ、ぁ……は、ぁ、あ……っ」  これ……これが、欲しかった……。  少し上反りぎみの、熱くて硬い、大好きな人の雄……。  寝台をギッ、ギッと軋ませながら、徐々に自分のペースで前後に腰をうねらせる。 「ぁん……はぁ……っ、インジェン、好き……っ、大好き……っ、気持ちいぃ……ぁあ……腰止まんない……っ、もっと……」  しゃがんだスタイルで尻を浮かせ、亀頭に気持ちイイ所を擦り付けて盛り上がっていると、カーテンの外でガタリと音が立った。 「……!」  か、カラフが……起きた……!?  俺はそれ以上1ミリも動けなくなり、しゃがんだ体勢でお尻を中途半端に上げたまま凍りついた。  ま、まさかこっちに来るなんてことは……無いよな……!?  フラフラと歩き回る足音を聞きながら、太いのが入ったままの尻がじっとりと汗ばむ。  緊張でナカがどうしても締まって……こ、こんな状況なのに、絶妙に気持ちいいとか、どうすればいい……?  と、誰にも聞く宛の無い疑問を頭に浮かべていたら、俺の下で寝ていたインジェンまで、唐突にぱちっと目を開けた。  勘弁してくれ、こんな時に起きるのは駄目っ!  彼はボンヤリした顔で、何を思ったのか、俺の上衣の合わせ目をひん剥いた。  その指で握られた、墨のついていない筆が、俺の胸板に何かの文字を書いてゆく。  ……春を迎え、喜びを迎え、富貴を迎える……。  春聯(しゅんれん)の、ありがた〜いお札の文言の一つだ。  筆を握ったら無意識に書いてしまうぐらい、繰り返し書いたに違いない。  有難い、縁起もいい、だが書く場所が間違ってる……!  たっぷりした硬めの獣毛の筆が、勃起した乳首をくすぐり、鳩尾を擦り、そして、俺の、歓喜の涙を流している膨らんだ亀頭をうっかり撫でて……平気で居られる筈がない。 「はンッ……!」  甘い嬌声を漏らしそうになり、口を両手で押さえる。  背後から声が聞こえた。 「リュウ……? インジェン殿……? 二人とも、どこに行ったのだ……?」  俺は首を横に振り、インジェンに訴えたが、彼はまるで、念入りに墨をつけるかのように、俺の鈴口を筆の毛でこねくり回している。  しかも、浮かせた俺の尻を左手で強く掴み、怒張をゆっくり、ゆっくり……奥を突く時だけは一瞬強く激しく、出し入れしてきて……。 「ーーーーーーッ……!」  快楽のツボを突いた二点責めに、頭の中が桃色にとろけていく。 「……インジェン……っ、ちんぽ動かすのだめぇ……っ」  小声で注意しても無視して、インジェンは俺の好きな場所……奥を苦しいほどグリグリと突いてきた。  同時に、筆の先を潰すように、亀頭がチクチクする沢山の微細な毛で刺激されて……。 「ンッ、ひっ……だめっ、気持ちよくなっちゃう……もう……ンふっ……やめ、い、イくぅ……っ」  インジェンの腰の上でビクッビクッと悶えながら達し、俺は繋がったまま倒れ込むようにして、彼の唇に懐くように唇を重ねた。  彼の右手から、淫液で濡れた太筆が布団の上にこぼれ落ちる。  ……舌を絡めながら彼の雄を締め上げている内に、いつの間にか、インジェンも俺の中に熱く濃い精を放っていた。 「は……あぁ……っ」  満足して口付けを解き、逞しい肩に頬を付けて幸福感に浸る。  そんな、頭がバカになってる至福の時間に、ごくごく近くから、空気を読まないカラフの声が聞こえてきて――。 「おお、声がするなと思ったら。インジェン殿、リュウ。ここに居たのか」  カーテンが外から一瞬、ぱっと上げられ、数秒後、すぐに下ろされた。 「おっと、これは失礼。すこぶる羨ましいが、もう時間だ。私は城に帰って政務に戻るとしよう」  ドMの俺も、流石に下半身丸裸、その上、ちんぽを咥え込んで拡がったお尻の穴を第三者に見られて、平気でいられるほど神経が太くない……!  かっ、カラフ〜〜〜!!!! いや、カラフは悪くないけれども……!!  ――何度目か分からない心の叫びが、羞恥で爆発四散する。  いつの間にかまた眠り込んでいたインジェンの身体の上に、俺は力なく倒れ伏した。  後日、城から届いた皇帝直筆の礼状を目にして、インジェンは激怒した。  書いてあったのは主に、インジェンの政務に関するアドバイスへのお礼がほとんどだったのだけど、最後に書かれていた俺宛の言葉は――。 『リュウ、新年早々にそなたの色香に溢れた姿を見て、ますます惚れた。また近いうちに会おう」  紙をグシャグシャに握りつぶし、自室の文机を真っ二つにせんばかりの勢いでインジェンが吠える。 「……リュウ! 一体、この前、あの間男(まおとこ)に何を見られたのだ!?」  酒のせいであの夜の記憶をすっかり失っているインジェンに、まさか「尻」とは答えられない。 「すみません、よく分かりません……!」  ……また尻っぽい口調で誤魔化すしかなかった……俺なのだった。 おわり
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