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スカートをふわりとさせて、神崎さんはエレベーターホールの方へと歩き出してしまう。 「待って神崎さん!今度……」 私は夢中で口を開く。 「今度私とランチでも行きませんか!?それでその、今みたいな話、たくさんして?辛かったとか腹立ったとか、あとお子さんの話とかも!」 距離を詰めすぎかとも思ったが、どう思われてももういい。もし許されるならもっと……私はもっとあなたと仲良くしたいよ。頼りきりの上司じゃなくて、対等な友達になりたいよ。 「……せん」 「え?」 「もう神崎じゃありません。元夫の姓なんて大嫌いなので。だから名前で呼んでください」 冗談っぽくも、きっと本心を言ってくれた神崎さんに大きく頷く。 「じゃあ美紀さん!なら私だってただの平社員なので気安く呼んで?それからもう、敬語もなし!」 勇気を振り絞ってまるで異性へ告白するように叫ぶと、美紀さんが踵を返して私の真ん前まで戻ってきてくれる。 「では、早速」 そしてまた、あの母性に満ちた笑顔を私に向けてくれた。 「これからもよろしく。風花さん」
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