囁く額縁

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    「タカシさん! こうなったら、もう誰でもいいから適当にナンパしてください!」 「おいおい、そんな無茶……」  この頃タブラ・マルギナータは「パンがないならケーキを」的な計画を口にするようになってきた。「魔法少女の候補と出会えないならば、魔法少女の候補を作り出しましょう」という作戦だ。  俺がこの世界で魔法と一番波長が合う人間である以上、その娘も遺伝的に波長が合うはず、という理屈らしい。  最初にそれを聞かされた時、 「いやいや、それじゃ間に合わないだろ? タブラ・マルギナータの国、現在進行形でピンチなんだろ?」  と聞き返したが……。 「その点は大丈夫です。あちらとこちらでは、時間の流れが違いますからね。この世界の十年も、私の国ではほんの一瞬。タカシさんの子供が成長するくらいまで、十分待てますよ!」  タブラ・マルギナータは、誇らしげに説明していた。  いやいや、そんな世界に大事な娘を送り込みたくはない!  というよりも、そもそも俺に『娘』なんて作れるような甲斐性があるのだろうか?  なんだかんだいって、このまま俺は、ずっと独り身のような気がするのだが……。  そんな内心はタブラ・マルギナータに伝えぬまま、 「おやすみ、アル子」 「おやすみなさい、タカシさん。……って、私はタブラ・マルギナータです! アル子じゃない、って何度も言いましたよね?」  俺は額縁と絵に挨拶しながら、今日もベッドに入るのだった。 (「囁く額縁」完)    
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