0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「タカシさん! こうなったら、もう誰でもいいから適当にナンパしてください!」
「おいおい、そんな無茶……」
この頃タブラ・マルギナータは「パンがないならケーキを」的な計画を口にするようになってきた。「魔法少女の候補と出会えないならば、魔法少女の候補を作り出しましょう」という作戦だ。
俺がこの世界で魔法と一番波長が合う人間である以上、その娘も遺伝的に波長が合うはず、という理屈らしい。
最初にそれを聞かされた時、
「いやいや、それじゃ間に合わないだろ? タブラ・マルギナータの国、現在進行形でピンチなんだろ?」
と聞き返したが……。
「その点は大丈夫です。あちらとこちらでは、時間の流れが違いますからね。この世界の十年も、私の国ではほんの一瞬。タカシさんの子供が成長するくらいまで、十分待てますよ!」
タブラ・マルギナータは、誇らしげに説明していた。
いやいや、そんな世界に大事な娘を送り込みたくはない!
というよりも、そもそも俺に『娘』なんて作れるような甲斐性があるのだろうか?
なんだかんだいって、このまま俺は、ずっと独り身のような気がするのだが……。
そんな内心はタブラ・マルギナータに伝えぬまま、
「おやすみ、アル子」
「おやすみなさい、タカシさん。……って、私はタブラ・マルギナータです! アル子じゃない、って何度も言いましたよね?」
俺は額縁と絵に挨拶しながら、今日もベッドに入るのだった。
(「囁く額縁」完)
最初のコメントを投稿しよう!