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「新川先輩かっこいーなぁ」
ユウがいつものように先輩がバスケをしている姿を見学しながら言う。わたしは付き添いで隣にいるだけ。新川先輩にも、その他の男子部員にもバスケにも興味はない。
わたしが好きなのは隣にいるユウだから。
「彼氏とか……欲しいな」
ユウはまたいつものように同じセリフを言う。言われる度に胸がいつもチクリと痛む。
本当はわたしがユウの彼氏になりたい。でも、なれない。ユウより手が小さくて、背が小さい……女のわたしではユウの彼氏にはなれない。
クラスの男子が横を通る。
「おーい、お前らまた一緒にいるのかよー。付き合ってんのかー?」
「違うよ、友達だって言ってるでしょ。うるさいな」
クラスの男子はわたしとユウが一緒にいるといつもからかってくる。それをいつも友達だと言って追い返す。
ユウが彼氏でわたしが彼女。
男女でいれば当然の解のように導き出される関係。でもそれは不正解。
ユウは……彼は、背が高くて手が大きい男の人が好き。だから、隣にいてもわたしはユウの彼女にはならないし、わたしはユウの彼氏にはなれない。
ユウこと篠崎勇太とは高校から仲良くなった。男女なのに妙にウマがあってしょっちゅう一緒にいるようになった。それはユウが女の子みたいだったからかもしれない。
仲良くなって、そのうちユウが自分の好きな人を打ち明けてくれた。男の人を好きなこと自体はそーなんだと言う感想だった。多分、なんとなく分かっていたんだと思う。でも何かがショックだった。わたしはそこで自分がユウのことを好きなことに気づいた。
ユウを男の子として好きなのか女の子として好きなのかは分からない。
可愛くて守ってあげたくなる。わたしが彼氏として。でもユウは新川先輩みたいな男の人が好き。
わたしは彼氏にはなれない。
分からないことだらけの中、それだけは導き出せた。
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