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「アイリちゃん、今日もバスケ部の見学付き合って」
可愛く言ってくるユウ。全然興味ないけど、放課後ユウの隣でいれるのが嬉しくていつも頼みを聞いてしまう。正直いつもなにしているんだろうなって思う。こんなことしていてもなんにもならないのに。
「あー、いけない。僕、今日、日直の仕事あったんだった。アイリちゃん先に行っていてー」
「えー、ユウのこと待ってるよ」
「先に行って、先輩のカッコいい場面あったらあとで教えてよ」
「えー」
ユウもいないのに全然気乗りしないバスケ部の練習を見る。ユウにあとで教えるために新川先輩をチェックをする。
先輩は背が高くて、ボールも片手で軽々と掴める大きな手を持っている。羨ましい。
見ていると新川先輩がこっちを見る。そしてなぜかこちらへと寄ってくる。
「君、篠崎といつも練習を見てくれている子だよね」
話しかけられた。いつもあなたを見ているのはユウでわたしは見ていないですが。と思ったけど、適当に相槌を打つ。
「あぁ……まぁ」
「篠崎と付き合ってるの?」
またみんな不正解を導き出してくる。
「付き合ってません」
不機嫌に言う。そんな態度なのに新川先輩はニコリと笑いかけてくる。
「じゃあさ、俺とかどう?ずっと可愛い子がいるなって、君のこと気になってたんだ」
ーーはぁ?意味わからない。
でも、ふと思ってしまう。
あれ?
……でも、こっちのほうが正しいのかな?
ユウと離れて、好きと言ってくれる男子と一緒にいる。もしかしたらそれが正解なのかもしれない。少なくともこの世界ではそれが求められている。
なんだか思考が停止してしまってそれ以上考えられなくなった。そのまま言われるがまま、先輩と連絡先を交換した。
ユウがあとから来たけど、何があったかを伝えることはできなかった。
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