落園愛歌

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 その直後に、ニーアの滅びの予言がなされた為、神殿管理者は、これがセアラを反逆者狩りに駆り出したが故の、巫女なりの腹いせなのだと判断した。――いや、そうしようとしたに違い無い。  セアラ・アインを、元の魔物狩りだけの戦士に戻すから、どうか損ねた機嫌を直してくれ、予言を撤回してくれと、なだめすかしたり、強い口調で諭したり、あの手この手を尽くしたが、0の巫女は嫣然と微笑んで、己の言葉を覆す事は無かった。  未曾有の大災害を恐れる民衆の怯えは次第に、それを回避する策を何も講じてくれない神殿への不信感に変わり、神殿前に集まって、堅く閉ざされた扉へ、石と巫女への罵声を投げつけて、美しい切り子細工の扉には見るも無惨なひびが無数に入った。  その隙に乗じたのだろう。反逆者は一般の民衆から神殿に不満を持つ者をそっと引き抜いては、自らの仲間に加えて、着実に数を増やしていった。自然、セアラ達の反逆者狩りは増える。しかしそれでも追いつかないほどに、猫一匹が鼠を捕っても鼠が増える速度には及ばぬように、反逆者は増え、それに便乗するかのように、楽園に上陸する魔物の数も増していった。  混乱は混乱を呼び、神殿の抑制が利かなくなって、あちこちで暴動が起きる。毎日、神聖なる楽園のどこかで血が流れる。  そして遂に、驕れる人間共への天罰は下った。
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