決着

2/9
687人が本棚に入れています
本棚に追加
/664ページ
「ちょ、ちょっとトール、それは……っ」  歯を食いしばりながら項垂れるアレクシスを見て、ティナは少し可哀想に思う。自業自得とは言え、アレクシスがどれだけラーシャルード神に献身してきたか知っているからだ。 「まあ、どっちでも良いけど、この決闘は俺の勝ちってことで。異論はないよね?」  肝心の剣を折られたアレクシスに反論の余地はない。きっと素手で戦ってもアレクシスはトールに勝てないだろう。 「…………っ、わかった。俺の負けを認めよう」  観念するようにアレクシスが負けを認めた。  ある意味ティナを賭けた戦いは終わり、お互い怪我もなく済んだことに、ティナはホッと胸を撫で下ろす。 「じゃあ約束通り、聖国と王国はティナに金輪際関わらないこと。ティナが望まない以上、聖女として扱わないこと。あ、これには神聖力の行使も含まれるから。それと──」  トールが次々とアレクシスに要求を突きつける。しかし決闘したのはトールなのに、その内容はティナを守るためのものばかりだ。  そんなトールに、ティナはどんどん彼に惹かれていく自分を自覚する。
/664ページ

最初のコメントを投稿しよう!