決着

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 大切な存在がいるということは、その人にとって、とても幸せなことだとティナは思う。だけど、トールにそんな存在がいると知ったティナの心は、そんな思いとは裏腹に傷付いたかのように痛む。 「……そう、なんだ……」  ティナは胸の痛みを堪え、何とか言葉を絞り出す。 「……その人とは、もう会えたの……?」  もしかするとトールの大切な人とは、家族や友人のことかもしれない。  しかし、命を掛けるほどの強い想いをその人に向けるトールに、ティナは言いしれない寂しさを抱く。  ──ずっと自分だけが、トールの特別なのだと思い込んでいたのだ。  自分の勘違いに気付いたティナは、羞恥心でどうにかなりそうだったが、そんなティナに気付くはずもないトールが、「それは──」と答えようとした時、ティナの腕の中にいたアウルムが「くぅん……」と目を覚ました。
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