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しかもアレクシスから自分を守ってくれたトールに、ティナは全幅の信頼を寄せるようになっていた。
「ティナが喜んでくれたら俺も嬉しい。もっと喜ばせたいって思うよ」
トールがさらりとそんなことを言う。
「え、あ、ありがとう……」
ティナは下心が全く感じられない、ごく自然なトールの態度に、打算的なものがあればまだ冗談で流せるのに、と思う。
(狙って言ってるなら、からかうなって怒れるのに……!)
もしこれが本当に演技なら、トールはこの世に名を残せるほどの役者になれるだろう。
ティナが心の中でそんなことを考えている内に、モルガン一家が休んでいる野営地に戻ってきた。
「明日はクロンクヴィストに到着するだろうし、今日は早めに休もうか」
「そうだね。じゃあ、ゆっくり休めるように結界を重ねがけしちゃおうかな」
トールの提案にティナは頷くと、何者にも邪魔されず眠れるようにと、強力な結界を張るために精神を集中させる。
「慈悲深き神の加護をこの地に与えん──<カエレスエィス>」
いつもの結界魔法と違う幾重にも重なった結界は、もはや結界というよりは空間を切り取ったかのようだ。
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