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生徒達が固唾を飲んで見守っている中、王子からの罵倒をずっと無言で聞いていたクリスティナが、ゆっくりと口を開いた。
「……発言の許可をいただきたく存じます」
「許可しよう。しかし言い訳はするな! お前に拒否権はない!!」
フレードリクにクリスティナは一礼すると、顔を上げ、姿勢を正し、真っ直ぐにフレードリクを見据える。
その堂々とした姿には、未来の王妃になるべく、厳しい教育を受けてきた者としての威厳があった。
「恐れながら、私と殿下の婚約は陛下が決められたこと。その決定を殿下が勝手に覆して宜しいのですか?」
クリスティナの凛とした声に、フレードリク以外の中庭にいる誰もが聞き惚れ、生徒達の意識は一瞬で彼女に惹きつけられる。
「父上には私からちゃんと説明する。父上もお前が下賤な女だと知れば納得してくださるだろう」
「左様ですか。では、次に<聖女>の資格剥奪ですが、大神殿からの許可は取られましたか? 大神殿は説得でどうにかなる相手ではございませんが」
「ふんっ! それならば問題ない!! 偽物のお前を追い出し、新たな<聖女>を連れていけば、神殿も諸手を挙げて喜ぶだろう!!」
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