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ルーアシェイアの身体から発せられていた光が小さくなり、空気に溶けるように消えていった。
湖には細くなった月が映り、再び静寂が訪れる。
「──ふぅ……。あの方が精霊王……! すごい……!」
ルーアシェイアが消えた後、緊張が解けたティナはその場にヘナヘナと座り込む。
人智を超えた偉大な存在がすぐそこにいたのだ。普通の人間なら威圧だけで気を失っていたかもしれない。
ティナも平気なふりをしていたがその実、自我を保とうと必死であった。
《まだ月が細いから、ルーアシェイア様の力も弱いわね》
《すぐ眠っちゃったもんね》
《早く月が満ちたらいいのに》
「えっ……! あれでも弱いんですか……?!」
気を抜けば気絶しそうなほどの威圧感だったのに、ルーアシェイアの力はまだ弱いと言う。もし全快したらどうなるのか、ティナには想像もつかない。
《月の光が強ければ強いほど力も漲るの》
《それでも全盛期には程遠いけどね》
《最近ずっとこうなのよ》
ルーアシェイアの力が弱まっていることに精霊たちも不安そうだ。
ティナはそんな精霊たちをどうにかして安心させてあげたい、と思う。
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