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「ちっ……。つくづくムカつく野郎だな」
昔からの癖で、余程の事がない限り、無闇に他者からの干渉を受けたくないのが、ラキがラキたる所以だ。
要するにオフィーリアは、その点すらもきちんと理解して、ラキに接している。
本当に心の底からまだまだ短い付き合いであるというのに、たった数日一緒に過ごしただけで完全に、しかも完璧に扱い方を把握され、あまつさえ掌の上で良いように転がされている。
これも経験の違いなのか何なのか、それとも才能の差であるのかは知れないが、とにかくそうした意味でもラキはオフィーリアに敵わないようであった。
ラキがそんな風に考え込んでいる間にも、オフィーリアとジョシュアの対峙に動きがあったようだ。
瞬時に目をやると、オフィーリアからのモーションを待っていたジョシュアの方が、なかなか始まらない手合わせに焦れたのか、先に動いたようであった。
どうやらジョシュアは肉体派で且つ接近戦を好むらしく、オフィーリアもいつも使う剣を出さずにその身一つで対応している。
お互いがっちり手を合わせ、下手な動きが出来ないように渾身の力を込めて握り、牽制している。
睨む姿は互角にも見えるのだが、恐らくオフィーリアの方が気圧されている。
いつもは攻撃を仕掛ける側であるのに、今回に限っては相手の出方を伺っているように思える。そんな、オフィーリアにしては消極的な戦闘スタイルが非常に気になる。
――一体ヤツは、ジョシュアの“ナニを”恐れているのか、と――。
「あくまでも、仕掛けないつもりか？」
低いが、良く通る声だ。
今でもそうだが、通常時に聞いてもさぞかし迫力を伴う声だろう。
あのオフィーリアが受け身に徹しているという疑問から導き出される答えは、俄には信じ難いのだが、恐らくジョシュアが得意とする正確な戦闘スタイルを知らない。
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