第二章・―攻防戦―

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 もしくは滅多に目にしないからだ。  だから、自分からは手を打てない。あくまでも受け身になる。  パッと見でオフィーリアより格段に強そうだったシャークが、本気を出して勝てない相手と聞いたとはいえ、話し振りからして何度も対峙をしていそうだから、戦闘スタイルや対策の一つや二つ、アドバイスやら何やら、してもらっていてもおかしくなさそうなのにと、ラキはふと考える。  それとも、普段から仲が悪そうであったから、同じ職場にいようが徹底的に無視する間柄なのだろうかと、あらぬ誤解を抱く。 「ならば、遠慮なく行かせてもらうか」  そうこうしている内にも、再びジョシュアが先に動いた。  両手拳を払い、遠慮も躊躇もなくずいっと一歩、目にも留まらぬ素早さで詰め寄ったかと思うと、次の瞬間にはオフィーリアが遥か後方へと跳んでいた。 「……?」  一部始終を見ていて、一体何が起こったのか全く理解出来なかった。  ジョシュアが束の間、不服そうな表情を浮かべた事で辛うじて、何かしらの手痛い一手がオフィーリアにより、未然に防がれたという事実だけは推測出来る。  オフィーリアは多分、投げ飛ばされたのではなく、本能的に危険を感じて咄嗟の判断でジョシュアからの攻撃を躱したのだ。  その証拠に、オフィーリア自身何が起こったのか理解出来ていない表情で、珍しく青ざめている。 「ふむ……。場数を踏んでいるのは確かなようだな。馬鹿猫のように、一筋縄ではいかないか」  オフィーリアが見せる非常に珍しい反応を見て、ジョシュアがにやりと笑う。  要するにシャークとやらは、この時点で少なくとも一度はジョシュアに投げ飛ばされている。  その先手必勝業を、オフィーリアは見事避け切ったと考えて良いのだろう。  だが、褒められてもあまり嬉しくなさそうなオフィーリアが、低く唸る。
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