第一章・―指南役、罰ゲームの餌食に―

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「遠慮はするなよ。最初から全力でこい」  迷っているのを見透かされたのか、ジョシュアが先手を打つように煽ってくる。  この、ジョシュア=ブラックホークという人物については、相手が人間だからとか、そういった青臭い概念は捨てた方が良い。  何しろ、本気を出したシャークが唯一勝てない相手だ。  間違っても手加減などしてはいけない。  しようものなら最期、その場で命の危機に晒される事請け合いだ。 「……」  だからといって、あまり気は乗らない。  勝てるとか勝てないの問題ではなく、自分と相棒の仕出かした事で、現在進行形で皆に迷惑をかけまくっている現状が気に入らないからだ。  こうなれば、ジョシュアが納得するまで全力で相手をする。  それしか場を穏便に収める方法はないだろうと、いい加減腹を括った。  端から勝てるとは思っていない。要はジョシュアを認めさせれば良い。そのために、全力は出す。  例えシャークが敵わない相手だろうが、オフィーリアとて格下の敵とばかり闘ってきた訳ではない。  常に極限の状態で、それこそ“命”のやり取りを繰り広げ、生き延びてきた自信と経験がある。  構えて深呼吸をする。  決して油断している訳ではないが、さすがにジョシュアを相手にして“アラストル”を使うのは気が引ける。  それよりも対等な条件で勝ちを手にしてこその、生活費だ。  元々四大霊鬼“蒼”とは、血筋の上で繋がりがあったコーラルブルー家も元は裕福な家計であったが、オフィーリアの失態による地位剥奪のせいで貧乏暮らしを余儀なくされ、その日暮らしに近い生活を送るため、貯金はほぼゼロに近い。  誰にも迷惑をかけたくないという信念が邪魔をして、修繕費を一括払いするとは言ったが、死活問題に発展するくらいには、非常にマズい事態なのである。
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