第一章・―指南役、罰ゲームの餌食に―

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 取り敢えず、考え込んでいても仕方ないため、試合開始の合図を待つために構えてみる。  ジョシュアが闘う様は、何度か目の当たりにしているが、よもやあれが本気であるとは到底思えない。  手加減はしないが、小手調べに一撃をかますべきか。しかしながら、初対面でその戦法を取り、ものの見事にひっくり返されてしまったと、かつてシャークから聞いた事がある。  一体どうやって投げたのか、さすがのシャークにも、いまだに理解が出来ないらしい。  投げ技はいくらでも喰らっているという。だが、ただの一度も反応出来なかったし、まして受け身を取る事すら至難の業だったと、ちょっとばかり意味不明な答えまで返ってきたのだ。  オフィーリアにも説明は理解出来なかった。  自分も受けてみれば()()るのだろうかと、ぐっと両足に力を込める。  とにかくジョシュアに対しては、不穏な噂しか聞かない。  特に対峙した事のある犯罪者からは、ろくな感想しか出てこない。  その時点でうんざりするのだがと、ちらりとジョシュアに視線を遣る。  相変わらず、一体何を考えているのか分からない無表情だ。  そして当然の事ながら、一分の隙もない。  どこから攻めるか、というよりは、どう攻めるかを考えた方が良策かも知れないと、最初の一手を待ってもらえているのを良い事にして、しばし迷う。  闘いにおいて、初手は非常に大事なものだ。  正解であれば有利な立場になれるし、逆に間違えば命取りにもなる。  ジョシュアの基本スタイルが分からない。一体どういう武術を学び、得意としているのか、毎回見る度に違う動きをするため、いまだに正確には掴めていない。  どういう攻め方をすれば良いのか、皆目見当もつかないのだ。  こちらが長考し過ぎて、さっさと動かなければ、ジョシュアの方から初手がくる筈だ。
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