僕の将来の夢

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「お前のペンネーム、バンクシーだったよな」  僕は頷いた。  猫は人間の世界で画家として活躍することはできない。そう言われ続けたが、僕はそれを解決する方法を思いついた。  顔も本名も明かさず、素性不明という形で活動をする。  そうすれば、人間にも猫にも、何の違和感も与えず絵を見てもらうことができるのだ。 「まさか、人間の奴らは、バンクシーが猫だなんて思わないだろうな」 「ああ」  いつも人間は猫を下に見ている節がある。  しかし、その人間を騙しているという事実は、猫である僕には嬉しくてたまらないものであった。 「それじゃ、ここらで終わりとするか。なんか困ったら言えよ」 「康平もな」  その日、康平と別れたあと、僕は自分のアトリエで絵を描き始めた。  もしかしたら、僕だけじゃないかもしれない。猫が化けているのは。  あの有名な音楽家だって、芸能人だって、漫画家だって。  もっと言えば。  エブリスタで小説を書いている者の中にも、いるかもしれない。
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