10人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
「お前のペンネーム、バンクシーだったよな」
僕は頷いた。
猫は人間の世界で画家として活躍することはできない。そう言われ続けたが、僕はそれを解決する方法を思いついた。
顔も本名も明かさず、素性不明という形で活動をする。
そうすれば、人間にも猫にも、何の違和感も与えず絵を見てもらうことができるのだ。
「まさか、人間の奴らは、バンクシーが猫だなんて思わないだろうな」
「ああ」
いつも人間は猫を下に見ている節がある。
しかし、その人間を騙しているという事実は、猫である僕には嬉しくてたまらないものであった。
「それじゃ、ここらで終わりとするか。なんか困ったら言えよ」
「康平もな」
その日、康平と別れたあと、僕は自分のアトリエで絵を描き始めた。
もしかしたら、僕だけじゃないかもしれない。猫が化けているのは。
あの有名な音楽家だって、芸能人だって、漫画家だって。
もっと言えば。
エブリスタで小説を書いている者の中にも、いるかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!