Uber Birth

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Uber Birth

 また、あの日がやってくる。誕生日だ。私は、誕生日が苦手だ。誰も祝ってくれる人が、いないからだ。小学生ぐらいまでは、誕生日がやってくるのがとても嬉しかった。誕生日プレゼントをもらえるということもあるが、単純に、「おめでとう」と言ってくれる人が周りにいたから、嬉しかったのだ。  しかし、大人になるにつれて、私に「おめでとう」と言ってくれる人は、少なくなっていった。35 歳になった今、私に「おめでとう」と言ってくる人は 、1人としていない。元々私は人付き合いが苦手で、友人関係は薄く、もちろん恋人もおらず、社会人になってからも仕事仲間で仲のいい人はいないので、誕生日を迎えるたびに、自分の人望のなさと、孤独な現実を、否応無しに再確認させられた。  そんな嫌気が差す誕生日が、 3 日後に迫っていた。  だいたい 5 年ぐらい前から、私は誕生日の日に、ちょっと高めのディナーの予約を取るようにしている。どうせ誰も祝ってくれないのだから、誕生日ぐらいは、贅沢をしようと思ったのだ。  仕事を終えて家路に着き、くたびれたソファに私は座り込んだ。適当にテレビをつけて、空っぽの水槽を水で満たすように、無音の空間を雑音で満たした。  スマートフォンを取り出して、レストランを検索する。タップとスクロールを繰り返していると、あまり見かけない広告が出てきた。  その広告には「UVER Birth ―あなたの誕生日を祝います―」とあった。  明らかにUber Eatsを模したサービス名だ。問題ないのだろうか。  試しに広告をタップし、サービスの内容を確かめてみた。  誕生日当日の朝、モーニングコールがあり、その後おめでとうのメッセージが届くらしい。料金は通常三千円だが、現在はキャンペーン期間中で、初回利用の場合は無料だそうだ。  どのような形でメッセージが届くのか詳しくは書いてなかったが、電話かメールだろう。もしかすると帰宅後に家に来て、対面で言ってくれるのかもしれない。奇抜ではあるが可愛らしいサービスだな、と思った。  無料ならいいかーー。  私はUber Birthに申し込んでみた。
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