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♢緒二子視点
真王が好きだ。緒二子の心は完全に奪われた。
あんなに紳士的に優しい彼のことを慕わずにはいられなかった。
彼のベッドはきちんと洗濯したシーツ。ここに彼は寝ていたのだろうか。
一緒に寝たい。なぜ、何もしないのだろう。
むしろ、何かしてほしい。
戸籍こそ夫のものだったが、戸籍に未練はなく、あるのは真王への忠誠と愛情だった。
ある時、緒二子はふと隠し扉のようなものを見つけた。狭い部屋なのに、物が少ない。
ずっと気づかなかったが、床下収納がある。
もしかしたら、そこにプライベートなものはしまっているのかもしれない。
真王は女性に関心がないのかもしれない。
不安になり、隠しているものがないかを彼がいないときにチェックしてみた。
すると――そこには、緒二子の隠し撮り写真やデータのようなものが置いてある。
なぜ? これは社会人時代に私が帰宅している様子。
自宅でくつろいでいる様子。
真王は以前からずっと前から私を見ていた?
つまりストーカーだった?
それに気づいた。
でも、怖いというよりも、嬉しい気持ちになる。
真王はずっと一途に思っていてくれた。ずっと気に留めてくれていた。
愛を知らない私は彼の愛をとてもとても嬉しく思う。
そして、彼の愛を感じた瞬間体が火照る。
彼の布団に頬ずりし、体全体を擦りつけた。
彼の布団も彼の衣服も全て借りている。自分が彼の物を所有していることが嬉しい。
こんなに愛されるなんて、嬉しい。
もっともっと愛してほしい。
親の分も夫だった人の分もずっと愛してほしい。
私の運命の相手は――優しいストーカーだった。
共依存という言葉を二人は知らないけれど、きっとそれは共依存なのかもしれないし、真実の愛かもしれない。
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