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<1・Execution>
おかしい。こんなことがあっていいはずがない。
セリーナ・イーガンは茫然とした気持ちで、周囲の若者たちを見回した。
丸テーブルを囲むように並べられた椅子に座った、自分以外の八人の男女。彼らがみんな、揃いも揃って自分を見ている。同情するような眼、呆れるような眼、軽蔑するような眼、憐憫の眼。どれもこれも、セリーナを助けるつもりがないのは明白だった。
「嘘よ」
震える声で、セリーナは告げる。
「こんなはずがない。私が、私が選ばれるわけがない……!何で、よりによって私が“追放者”なのよ!?一族から追い出されなきゃいけないのよ!!」
ガンッ!とテーブルに拳を叩きつける。白い板が派手な音を立てて揺れ、まだ幼い少年少女たちがびくりと肩を震わせるのを見た。それでも、セリーナは怒りを収めようとは思わない。思うはずがなかった。
この八人の中から、次の魔法族の継承者を決める。同時に、一番役立たずで魔女の素質がない追放者を多数決で決定する。それが、この会議の議題だった。
セリーナは、自分こそが継承者であるはずとばかり思っていたのである。そのために必要最低限の根回しはした。兄と姉にもしつこく自分に票を入れるように頼み込んだし、立場の弱いタスカー家の者達はしっかりと圧力をかけてきたはずだ。それなのに、何故。何故満場一致に近い票が、自分に集まるというのか。継承者ではなく、追放者として――魔女の素質に溢れた自分に何故。
「まだわからないのか」
「!」
冷たく言い放ったのは、パーセル家の次男――トレイシー・パーセル。艶やかな黒髪に怜悧な群青色の瞳を持つ青年は、その美貌で冷たくセリーナを見下ろしている。
「貴様の性根が腐っていることを、皆が皆同じように見抜いた。それだけのことだ」
「なんですって!?」
「セリーナ・イーガン。貴様には、我が魔女の一族の跡継ぎに相応しくない。継承者どころか、一族として迎えていること自体が恥というもの。貴様は一族の血を継承する資格もない」
彼が、この場の空気を支配していることは明白だった。セリーナの射殺さんばかりの視線を浴びても眉一つ動かさず、無情にも言い放ったのである。
「出て行け。貴様のような悪女の顔など、金輪際見たくはない」
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