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それなのに、何故。何故満場一致に近い票が、自分に集まる。継承者ではなく、追放者として、魔女の素質に溢れた自分に何故?納得いかない、理不尽、有りえない。これは誰かの罠にはめられた結果だと体を震わせる。
――私、ちゃんとできてる?みんなにそう、見えてる?
ちらり、と震えているタスカーの双子の兄妹を見た。彼らは青ざめた顔で視線を逸らしていた。
結局、二人とも非情になりきれなかったということらしい。継承者にも、追放者にも、お互いに票を入れあうという矛盾したことをしていた。継承者にトレイシーを選ぶことも、追放者にセリーナを選ぶことも決断できなかったらしい。
たとえ、自分達の一票では結果が変わらないとわかっていても、そうせざるをえなかったのだろう。彼らには酷いことをしてしまった、とセリーナは心から思う。
彼らにも、秘密にしたままにした方が良かったのかもしれない。ある程度磔刑の魔女の話を知られてしまってはいたが、まだ誤魔化す手段もないわけではなかったのではないかと今なら思う。巻き込む選択をしてしまったのは、自分とトレイシーの咎だ。
だから責めることなどできるはずがない。あとは、二人の奇妙な投票に他の兄弟たちが疑問に思うより前に、この投票結果を押し切らなければ。異議を申し立てられる、その前に。
「まだわからないのか」
「!」
セリーナの考えをわかってくれたのだろう。いいタイミングで、冷たく言い放ってくれたのはトレイシーだった。怜悧な群青色の瞳の奥に本心を隠し、セリーナを厳しく糾弾する。
「貴様の性根が腐っていることを、皆が皆同じように見抜いた。それだけのことだ」
「なんですって!?」
「セリーナ・イーガン。貴様には、我が魔女の一族の跡継ぎに相応しくない。継承者どころか、一族として迎えていること自体が恥というもの。貴様は一族の血を継承する資格もない」
この場の空気を支配する一喝。セリーナの射殺さんばかりの視線を浴びても眉一つ動かさず、無情にも言い放つ“次期当主”。
「出て行け。貴様のような悪女の顔など、金輪際見たくはない」
――ありがとう。
セリーナは声に出さず、心の中で呟いた。
――最後まで、私の心をわかってくれて、本当に。
これで、全てが救われる。自分のような悪女は、トレイシーと同じところには行けないかもしれないけれど。それでもいつか生まれ変わって、もう一度会えるかもしれないと信じることができる。それだけで救いになるのだから。
無駄ではなかったはずだ、時間を遡ったことも。そして、禁じられた恋に身を落としたことも、全て。
これでもう、自分に、未練は。
「そうですね」
セリーナが覚悟を決めて目を閉じた、その時だった。
「そろそろ茶番は終わりにしましょうか、セリーナにトレイシー」
「……え?」
ブリトニーの、とんでもない言葉が響き渡るまでは。
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