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<2・Britney>
トレイシーを自分にベタ惚れにさせ、最後の継承会議でゴミのように捨ててざまぁしてやる!それが自分の復讐!――と、決めたはいいものの。
これをやるためには結構課題が多い、ということにセリーナは早々に気が付いたのだった。何故なら、あのトレイシーのことはセリーナの方がずっと避けていて、認識といったら“イーガン家の次男のくせにクソ偉そうなムカつくイケメン”くらいなものでしかないからである。
確かに顔はいい。悔しいが、滅茶苦茶いい。大学でもファンクラブができるくらいには、ものすごく良い。
自分と同い年の二十歳であるはずなのだが、彼ときたら昔から大人びた性格に顔立ちだったものだから、年上に見られることが多かったのである。高等学校に通っていた時から、隣接する大学の生徒と誤解されて先生に引っ張られそうになったエピソードは正直笑ってしまったものだ。本人があまり言葉数が多いタイプではないから余計間違われるのだろう。
――まあ、普段あんまり喋らないくせに、私に対するイヤミには事欠かないんだけどね!特に継承会議では人を死ぬほどコケにしてくれやがって……ああもうっ!
才能があるのも認める。もっと言うと、次期継承者の候補として名前が挙がっていた人物であることは確かなのだ。どちらかというと“魔女”という称号なだけのことはあり、磔刑の魔女の称号を得て当主に選ばれるのは女性が多い。にも拘らず、先代、今代と珍しく男性が続くかもしれないと大人達は噂していた。セリーナとしては“そんなことにはならないけどね!”とタカをくくっていてこのザマなのだけれども。
とはいえ、セリーナからしてトレイシーに関する知識なんてのはその程度のもの。
彼に惚れられるためには、とりあえず彼について知らなければいけないのだが、当然トレイシーの好みのタイプなんてものも分かってはいないのである。というか、本当に異性愛者であるかも怪しい。なんせ、あれだけ女性ファンが多いのに、まったくといっていいほど誰それとお付き合いしたというエピソードが聴こえて来ないからである。
残された時間は、一年しかない。ということで、まずは情報収集である。
「まあ」
セリーナからお茶に誘われた実姉、ブリトニー・イーガンは。目を丸くして、席に着いたのだった。
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