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「セリーナが私とお茶がしたいなんて。珍しいこともあったものですね。何か悪巧みでも?」
「……なんでそうなるのよ」
「だって、セリーナって私のこと好きじゃないでしょう?」
「うぐっ……」
席に座ってくれたはいいが、随分とぐさぐさと言葉を投げてくるものである、この姉上は。
まあ、疑われるのも無理はないことなのだろう。継承会議でも同じテーブルを囲むことになる、二十五歳の姉ブリトニーは――セリーナと同じ赤髪に緑色の目をしたお嬢様であるのだが、性格は全く異なるのである。
一言で言うと、天然っぽいくせに結構な毒舌。
丁寧な言葉遣いで、ストレートに言いたいことははっきり言うタイプ。
魔法の成績も運動神経もセリーナに劣るくせに、長女というだけでエラそうなので、正直苦手に思っていたのは事実だった。一緒の家に住んでいるので話すことがないわけではないが、今までならば彼女から仮にお茶に誘われてもセリーナの方から断っていたことだろう。
それでも今日、ブリトニーに声をかけた理由はただ一つ。トレイシーについて知っていることを教えてもらうためだ。
セリーナは既に大学を卒業して等しい。が、彼女は大学教授をやっている伯父を手伝って研究助手をしており、大学に出入りすることは少なくないのだ。そして伯父のゼミに所属しているのがトレイシーである。研究を通じてとはいえ、トレイシーと話す機会が多いことは間違いない。
「い、今は!お姉様の話がしたいんじゃないのよ、私は!」
自分達の関係を突っ込まれると、面倒になるのはこっちの方である。
この姉も、将来的には継承会議ではトレイシーを継承者として選び、セリーナを追放者に選ぶことになる戦犯の一人なのだ。恨んでいないはずもないし、長話もしたくはないのだから。
「し、知りたいのはトレイシーのことなの!」
「トレイシー?パーセル家次男の?」
「そーよ!あいつ、ファンクラブのやつらにきゃーきゃー言われてるわりに全然女の噂がないじゃない?本当に女の子に興味あるのかしらと思って!興味あるなら、もう少し好みのタイプとか、誰それと付き合ったとか、そう言う話が出てきそうなもんじゃない?」
「ふーん?」
やや焦ったような口調になってしまったことで、どうやらブリトニーには余計な勘ぐりをされてしまったらしい。明らかに、気合を入れるように椅子に座り直す姉。
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