<2・Britney>

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「なるほど、セリーナも女の子になったってわけね。うんうん、トレイシーってばイケメンだものね。高嶺の花だし、欲しくなるのはわかりますわ、ええ」 「ちっがあああああああう!」  自分はあんな男一ミリも好きなんかじゃない。逆にあいつを自分に惚れさせるためにどうすればいいのか知りたいだけなのだ!――なんて正直なことを言うわけにもいかない。とにかく!とセリーナは繰り返す。 「あいつがどういう女が好みとか、どういう趣味があるとか、何でもいいから姉様教えなさいよっての!」  しまった、と思ったのは。その言葉で、明らかに姉のニヤニヤ笑いが濃くなったからだ。 「それが人にものを教えて欲しいという態度?残念だけれど、私はそこまでお人よしではないのですよ」 「ちょっ……」 「うーんそうねー。少しは殊勝な態度を見せてくれたら、考えも変わるかも。例えばこれ」  彼女は自分の手元のコップを持ち上げて言った。メイドに入れさせた、フレイルティーである。フレイルピーチ、というフルーツの葉を浮かべたフレーバーティーだ。やや淡いピンク色に染まっているのが特徴である。ほどほどに渋みと甘味があって、セリーナと姉が共通して好きな紅茶の一つだった。 「このフレイルティーを入れるには、フレイルピーチの果実と葉が両方必要ということは、貴方も知っているはず。このお茶一杯を入れるためだけに、メイドさんや執事さん達が収穫に走らなければいけないのですよね」 「それが何か?」 「セリーナってば、このお茶が好きなことと、メイドさんに嫌がらせしたいがために頻繁に収穫に走らせるでしょう?他の仕事もそっちのけにして。駄目ですよ、そういうことばっかりしているから悪役令嬢なんて言われるんです」  ブリトニーはにこにこしながら、とんでもない事を言ってきた。 「私、もう一杯このお茶が飲みたいんですよね。それも、可愛い妹が自ら収穫したフレイルピーチで、最高に美味しい紅茶が飲みたいわ。……どう?そこまでしてくれたら、相談に乗ってもいいのだけれど」
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