788人が本棚に入れています
本棚に追加
「お疲れ、仕事は出来たのか?」
「お陰様で」
街の入口にいる門番に、ギルドカードを見せるとお約束の会話になる。
冒険者が夕方に戻ってくると言うことは、依頼がこなされたということだろう。
ギルドに向かって歩いていると、顔見知りの冒険者が駆け寄ってきた。
「おい!」
肩を掴んで険しい顔をされたので、思わず眉根を寄せた。何事なのか?
「どうしたんだ?」
「お前たち、森にいってたんだよな?」
「ああ、そうだけど」
「ギルドに兵士が来てるんだ。森に入った冒険者に片っ端から接触してきてる」
「まじか?」
先程森であったことが脳裏によぎり、剣士は唾を飲み込んだ。
「なんか、大事みたいなんだ。素直に対応した方がいいぜ」
「ありがとな」
片手で例を言いつつも、仲間と顔を見合わせる。
魔石は各自で分配した後だ。
目線で確認をしながら、そのままギルドに向かう。冒険者として達成した依頼を報告しない訳にはいかない。
ギルドに入ると、確かに兵士がいた。普段見かけないような高級な服を着た文官らしき人物が椅子に座っている。
それを横目で見つつ、カウンターで依頼の達成報告をして報酬を受け取る。いつもならその流れで魔石を鑑定して買取を頼むところだが、今日に限っては怖くて出来なかった。
カウンターを離れたところで、兵士が近づいてきた。
「話がある」
有無を言わせない態度に従うしか無かった。
連れていかれたのは、やはり文官らしき人物の前だった。
「お前たちは、今日森に行ったか?」
予想していた質問に、パーティメンバーで顔を見合わせる。
「はい」
代表してやはり戦士が答えた。
「森で誰かに会わなかったか?」
ニヤリと笑いながら文官が聞いてきた。
その言い方は、まるで何か知っているふうにも聞こえた。
冒険者たちは、森であったことを自分の内で反復する。既に受け取ってしまった物がある以上、返答につまる。
「森の中で闇魔法を行使した反応があった」
その言葉に剣士の喉が上下する。
文官はいやらしくも、それを見ていた。
「何、大丈夫だ。不義理にはならん」
文官の言い方に戦士の肩が震えた。魔道士は隣のメンバーの服を握りしめている。
周りにいる冒険者たちは、そのやり取りを見守っていた。
「森の中で、闇魔法を見たか?」
確かに、その質問は約束の反故にはあたらなかった。
戦士は横目でパーティメンバーを見ると、深呼吸をしてから答えた。
「見ました」
最初のコメントを投稿しよう!